ドラマ『重版出来!』が面白い。仕事でぶつかる理想と現実の葛藤が絶妙に描かれているようで胸に刺さる。【第6話感想ネタバレあり】


f:id:demacassette:20160517231303p:plain:w300:right現在、TBS系列で放映中の「重版出来!(じゅうはんしゅったい)」を毎週楽しく観ています。
今のクールで観ているドラマは、この重版出来と真田丸くらいです。重版出来、熱苦しくて、面白くて、時々泣けます。



ドラマ概要

原作はコミックみたいです。ドラマの公式HPも楽しい感じ。
www.tbs.co.jp

ストーリー

公式HPの「はじめに」から内容を引用すると。

テーマは「本気で仕事するって、カッコいい。生きるって、素晴らしい」。
舞台は、週刊コミック誌の編集部。
何者でもない人が「漫画家」になる。その才能を支える編集者たち。
彼らは、「一冊の漫画」という夢のために、ひたむきに全力で仕事に取り組んでいた。ひとつの「漫画」が人生を変えるんだ。それを多くの人に届けたい… その「漫画」を重版出来させたい…重版出来(じゅうはんしゅったい)・・・それは、初版と同じ版を使い、同じ判型、装丁にて刷りなおすこと。つまり、売れた漫画ということ。そこに足を踏み入れたのは、新米編集者・黒沢心。
「今の自分が、心から熱くなれる場所は、ここしかないと思いました!」
まっすぐな彼女の人間力と持ち前の勘は、やがて皆を動かしていく。

まずは、タイトルの重版出来ってのは、著書でいう増版ってことですかね。そして、ドラマのあらすじだけ見たら、よくある新人成長物語なのですが、なんか描き方が面白いな、と思いました。それはドラマのコンセプトを次のように絞っているからかもしれません。

絞ったコンセプト

またまた公式HPからの引用

やりたい仕事じゃない、といい訳ばかりの営業マンが、本気で働く「景色」に魅せられた瞬間・・・自分の可能性を信じて一心不乱に漫画を描き続けて、漫画家という夢を叶える瞬間・・・。これは、働く全て人にエールを贈る、まさに本気で働く人たちの「想い」をこめた極上のお仕事ヒューマン群像劇だ。今日一日、会社で仕事を、学校で勉強を、家で家事を、頑張った人たちの、
自分へのご褒美になるような、明日からも頑張る勇気とヒントにあふれた、
笑って泣ける、テレビドラマの楽しさがぎっちりつまった
“とびっきり”の連続ドラマをお届けする。

ドラマを見た後にこの文面を見ると、なんだか納得します。これまでの新人成長ドラマのような、単に新人にフォーカスして正義感だけで突っ走る感じだけではないのが面白い。

ドラマ内でtwitterをうまく使って盛り上げていることと現実のtwitterが連動しているあたりも面白い。
twitter.com

なんか視聴率的にも好調のようです。どうやら本気で作り込んでいる製作陣の功績みたいですね。
www.asagei.com


原作

このドラマは、もともとマンガが原作ということで、マンガ業界を題材にしたマンガをドラマ化したもの、ということになります。
spi-net.jp

ビッグコミックスピリッツで現在も連載中のようですね。ビッグコミックスピリッツといえば、『美味しんぼ』ですね。他にも『土竜の唄』、『アイアムアヒーロー』、『闇金ウシジマくん』なども連載中みたいで、注目作も多そうですね。『団地ともお』もマンガで連載中なんですか!!いつもテレビで見てます。なんか他のタイトルも見たくなるものが多いですね。久々にマンガにもハマりたくなってきます。


キャラ比較

原作とドラマのキャストを比較してみます。

キャラ名 ドラマ*1 原作コミック*2
主人公
熱い新人編集者
黒沢心
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かっこよすぎる
先輩編集者
五百旗頭さん
(いよきべ)さん
f:id:demacassette:20160517232218p:plain:w200 f:id:demacassette:20160517232237p:plain:w200
ノリのいい編集長
和田編集長
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愛すべき新人営業
小泉くん
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ちょ、最強のベストチョイスキャスティングではないですか!?
ここでも、ドラマ製作陣の意気込みを感じます。
実写化成功例となるか?ドラマ『重版出来!』のキャスティングがなかなか贅沢で絶妙な件 #重版出来 - NAVER まとめ


見どころ

見どころは何と言っても、それぞれのキャラクターの個性と描写かなと思います。個人的にオダギリジョーが好きなので、ユルくも後輩をきっちり見守りつつ、導いていく感じがぴったりはまり役でたまりません。主人公の黒木花(はな)さんも、元気で熱いいいっぱいの新人編集者としてハマってます。荒川良々も相変わらず面白い仕上がり。そして、毎週一話完結方式で話が展開されていくのも店舗が早くて心地いいです。最悪、一話分見落としても来週取り返せる!

第6話感想「ツブシの安井が何故生まれたか??」(ネタバレあり)

これ、まともに書いていくと長くなっちゃいますので、超端的にまとめてみます。
フォーカスされているのは、"ツブシの安井"との異名を持つベテラン編集者です。

"ツブシの安井"とは

現在のこの人はこんな感じ。

  • 担当したマンガは、これまでハズレなし
  • 残業なしで定時に帰る
  • 漫画家や周囲には冷たく接する
  • 本音は裏アカのtwitterでつぶやいている
  • 担当した漫画家は一度は成功するが、その後は雑誌から離れていく

これだけ見ると、実績はすごいだろうけど、一緒に仕事したくないなぁと思っちゃうようなタイプです。人当たりが良くない(涙)。主人公の新米編集者も「なんで、もっと熱くならないの?プンプン」ってな勢いで、悔しい印象をもっています。

冷徹な"ツブシの安井"に至る経緯

しかし、この冷徹編集者が現在の仕事のスタンスになったのは、過去に大きな失敗があったからだった!ということがこの回で判明したのです。それが以下の流れ。

  1. かつては、黒木花のように熱意あふれる編集者だった
  2. 熱意をもって漫画家とともに良い作品を作り上げ、重版出来を達成
  3. 担当している雑誌で掲載されているマンガは良い作品が多かった
  4. しかし、突如として役員会でその雑誌の廃刊が決まる
  5. 廃刊を阻止しようと、土日返上で家庭を顧みずチーム一丸となり再生プランを検討する
  6. ふとしたきっかけで、担当していた漫画家がライバル雑誌の編集者から雑誌の廃刊を知らされる*3
  7. その漫画家へ謝罪に行くと、「リスクも顧みず会社に守られて仕事してる奴にはわからないんだよ!」的なことを言われる
  8. 家に帰ると、娘の誕生日を忘れていたことを妻に怒られ、離婚届を突きつけられる
  9. その出来事をきっかけに、良い作品づくりを追い求めるのではなく、会社に貢献できる売り上げ重視の作品づくりをするスタンスに切り替える決心をする

そして、"ツブシの安井"が誕生しました。

おまえのおかげで他で挑戦できる

ツブシの安井は、かつて担当していた雑誌が廃刊に至った経験から教訓を得て、自分が担当する漫画は必ず売れるように戦略的にやることを決意し実行していきます。その結果、他の漫画でチャレンジングな内容をできるようになります。それを第6話では和田編集長からねぎらうシーンがあり、これがなんとも泣ける感じです。ツブシの安井は、自分の我を捨てることで会社に貢献し、他のメンバーの生きがいややりがいを創出しているような立ち位置です。

自分に重ねてみる

これ、一般企業でもよくある!的な話ではないですか?
一般企業というのはいろんな解釈があると思いますが、特に新しい商品を生み出さないといけない部署がこれに近いと思います。社会的に役に立つ技術と思って、いくら良いものと信じて作り込んだとしても、世間が欲しいと思わなければ意味がない。売れなければ意味がない。こんな切なさに似ています。とっても似ています。漫画家さんっていわば、個人事業主で、編集者は会社に属するサラリーマンなので、7番にあるような指摘はすごい真っ当なものだと思います。

私は、企業の研究所に勤めていますので、漫画業界に少し重ねてみると、生み出したい技術や商品=漫画家の大事な作品、その事業化・販売を担っていく=漫画の編集者、のようなものでしょうか。ちょっと違う気もしますが、ざっくりこんなものでしょう。そして、研究部署内で出口戦略を担っていくのが、現在いる部署なのかもしれません。うわ、こう考えるとめっちゃ重要なポジション!!

twitterでの反応










おまけ
matome.naver.jp
ドラマと連動したtwitterアカウントとドラマ展開に連動したアカウント削除という動き。もし製作陣のしかけたものだとしたら秀逸すぎる。

感想まとめ

ちょっと、ドラマの話に戻りますけども、とりあえずこのドラマは内容も演出もキャストも面白い気がします。なので、今後も見続けます!

その他

そういや、かつて面白いと思ったドラマは、『カバチタレ!』、『ランチの女王』、『ビギナー』、『時効警察』、『SPEC』、『最高の離婚』、などパット思い出せる範囲はこんな感じ。オダギリジョー率高いかも。なんか自分がハマるドラマの傾向とか分析したくなりますね。ではまた。


*1:ドラマ公式HPより

*2:コミック公式HPより

*3:明和電機さんのtwitterに連動