『新しい事業機会を創出する「未来洞察」の教科書』から、未来は予想するものではなく創るものであると再認識スル。
そうです。未来は予測するものではなく、創るものなのです!って、いきなりなんなんですか。諸事情により、この著書の方と会うことになったので、予習した内容をレビューします。中身が濃いものなので、途中までのレビューにとどまっていますが。。。
- 作者: 日本総合研究所未来デザイン・ラボ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/03/11
- メディア: 単行本
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著者について
この本は、日本総研さんの未来デザインラボという部門?が著者となっています。
日本総合研究所 未来デザインラボ
未来デザインラボとは一体なんなのか?HPから概要を抜粋してみます。
将来の不確実性に備えるため、また、持続的な成長を図るため、個々の民間企業でも未来を予測することへの関心が高まっているように感じています。その背景として、私たちが接している企業の方々から次のような声が聞かれます。
「経営企画・事業企画部門は、これまでの内容を焼き直しただけ、下部組織からの意見をまとめただけ、の中長期計画を作り続けている。」
「新規事業・研究開発部門は、次世代に向けたテーマ創出、製品化・事業化といった経営からの大きな課題に応えきれていない。」
こうした問題意識の解決策として私たちが重要だと思っていることは、2つあります。未来を「予測」するだけではなく「洞察」する「誰かが」考えた未来像を発想の原点とするのではなく「自らが」未来像をデザインする。
私たちは、この「未来を洞察し、デザインする」という命題を実現するために必要な、未来像や未来シナリオを思考する
1)フレームワーク、
2)根拠となる情報の収集・分析やロジック構築、
3)クライアントのメンバーと共に考えるファシリテーション
の3つの要素を維持・発展させ、これらを駆使して未来志向のクライアントを全力で支援したいと考える次第です。
というわけです。つまり、企業の主に少し先のことを考える本社系部門に対するコンサルティングサービスを提供している部門という解釈でしょうか。中小企業の方々には、あまり縁がないのかもしれませんね。
そして、本の中で名前を連ねている方々たちです。
八幡 晃久|研究員紹介|日本総研
粟田 恵吾|研究員紹介|日本総研
石野 幹生|研究員紹介|日本総研
鈴木 麻美子|研究員紹介|日本総研
田中 靖記|研究員紹介|日本総研
概要
簡単に概要を連ねます。
未来は予測できないけど、未来洞察は必要
「その未来シナリオ見飽きたわ!」
みたいな未来予測はよくありますよね。これを本書では既視感のあるアイデアと、呼んでいます。つまり、既存の事実を並べたり、延長したりする未来の姿って、本当に普通のありきたりな、今から想像できる未来予測のレベルです。基本的に未来は予測不可能であるという立場に立って、本書は書かれています。
イノベーション創出担当者が陥りがちな思考の罠
これは重要なので一つ一つを転記します。
競争思考の罠
競合との差別化や、成功事業の優位性を守ることに腐心するあまり、新しい市場や需要を創造する視点を生み出しにくい。
ま、よくありそうな話です。自社の事業に縛られ、どうしてもそこに落とし込みたくなるのが人間というものでしょうね。
短期思考の罠
ロードマップに沿って考える癖がついているため、そこから外れた異質かつ不確実な知識、情報を排除し、短期的に都合のよい情報ばかりを集めてしまいがち。
もともと無難なストーリーで、上申したいので、余計な情報は排除したくなります。人間、新しいことを誰かに否定されながら進めるのは、なかなか苦手なものです。
技術思考の罠
技術進化や技術的な実現可能性という観点が強く、生活者のライフスタイルの中で製品がどう利用されるのかを具体的にイメージすることが苦手。
これは技術者がおちいりがちな視点です。この技術をなんとか形にできないか?という思いが強ければ強いほど、こうなります。
内製思考の罠
内製思考か強いがゆえに外部の異質なアイデアをどう活用すればよいかわからず、結局は社内による既視感のあるアイデアばかりが残り、変化を生み出しにくい。
内製思考というのは、いわゆるクローズドシステムの中でしか考えないことでしょう。自分たちが持っている工場やスタッフ、スキルの範囲でのみ考えるので、もちろん新しいアプローチや発想は生まれにくいですよね。
顧客思考の罠
既存の顧客の意見を重視するあまり、新しい市場や需要を創造する視点を生み出しにくい。また、「顧客」が「取引業者」を意味しているのか「生活者」を意味しているのかが部門ごとにあいまいなことが多く、他部門との議論が噛み合わない。
技術者はよく、「顧客視点で考えろ!」と文句を言われますが、それも程度があるようです。つまり、今いる顧客思考で考えると、見えているニーズへの対応しか考えきれないので、新たな顧客や市場の想像は望めません。
罠にはまるとどうなるか。
これら5つの思考の罠に陥ると、どうしても現状追認のバイアスが強くなり、非連続な変化がもたらしうる未来の可能性に対して耳を塞ぎがちになります。このような背景から、事業開発や研究開発、経営改革などの様々なイノベーション創造の起点において「未来洞察」が必要とされているのです。
こういった罠は、身近なところに存在しています。上司、同僚、先輩後輩、そして自分自身。私が思うには、会社という同じ思考の塊である組織内にいる以上は、この罠から抜け出せないような気がします。そう感じた私は、無駄に積極的に、外部の人と接するようにしています。そうすることで、自分が思っていた常識は、対して常識ではないことがわかり、さらに各業界で起きている常識に触れることができる気がしています。
未来洞察とは?
タイトルにもなっている「未来洞察」とは一体なんなのでしょうか?
未来洞察とは、「不確実な未来を自社の成長機会として取り込む」ための方法論であり、イノベーション創造の起点として活用しうるものであると考えています。
「機会領域」とは、現在の社会や市場の姿とは異なる未来、現在の延長線上にはないものの起こりうる未来のストーリー、言わば「未来像」です。
・・・ん〜、なんとなくわかるようなわからないような。現在の延長線上にない、ということは、簡単に言えば、想定外の未来ということでしょうか。
これは実例を交えるとより捉えやすくなるので、次で説明します。
想定外の未来の実例
想定外の未来という解釈での実例がありました。
iPhoneの発売当時
- ニッチな商品であり、自社の携帯電話事業にとって脅威にはならない。《ある日系電機メーカー幹部》
- カメラ付き携帯電話はデジタルカメラの代替品ではない。《デジカメ各社》
でも、結果はご存知の通り、iPhoneは世界中の市場を席巻し、最も人気のあるカメラにもなった。
これが「普通には想定しにくい未来」ってヤツみたいです。
未来予測と未来洞察
そして、今回のレビューはこの辺で終わります。なぜなら、読んだ方がわかりやすいから!ま、それはどんな本だって当たり前なのですが。
特に、未来予測と未来洞察の違いについて書かれていた部分だけ抜き出しておきます。
p39
Forecast:予測 | Foresight:洞察 |
---|---|
現在の延長線上で「未来」を考える | 「未来」を複数発想してから「今」を見る |
安定成長時代に適したスタイル | 不確実性の高い21世紀に適したスタイル |
この手のかき方って、イノベーション系の本でもよく見ますよね。昔は右肩上がりだった。今は欲しいものは手に入る時代で、ニーズやスタイルが多様化したので、簡単にはものは売れない。だから、考え方を変えていかなければならない。と。
でも、なぜ考え方って簡単には変わらないのでしょうかね。
所感
この本は、教科書と謳っているだけあって、繰り返し読み返したい本です。お世辞ではなく。ただし、この本に共感する読み手は限られるかもしれません。冒頭に未来デザインラボの説明でもあったように、比較的大きな企業で新たな事業創出や技術創出を仕事としてになっている人向けでしょう。それ以外の人は、「何を言っているの?未来を予測してくれよ。目の前の仕事を早くこなす方法を教えてくれよ。」となるでしょう。
改めてですが、対象としている部門の上層部及びスタッフにとっては、繰り返し参考になる書籍だと思います。
ぼやき
今回は、なぜかぼやきがありますw
先ほど書いたように、こういった類の話は、比較的大きな企業が大手のコンサルティング会社と大きな金額をやりとりして、壮大な資料を作るようなことが当然のごとく起きています。そういった世界と、中小企業や町工場はどうつながるでしょうか。日々、交差点で子供の見守りをしているボランティアさんやタバコやのおばちゃんとはどう結びつくでしょうか?その人たちの社会的価値とコンサルティングの方々の社会的価値はどの程度違うのでしょうか?
なぜ、こんな話をするかというと、未来洞察だろうが未来予測だろうが、そういった思考をしようがしまいが、日常の些細な出来事や仕事は流れているということを最近感じるからです。自分の仕事がどこまで社会に組み込まれていて、貢献できているのかどうか。あまり認識する機会がありません。
それは、自分の仕事が研究開発部門の中のさらに事業創出系の上流にいるからなのだと思います。上流といえば聞こえはいいかもしれませんが、エンドユーザーにまで反映するには時間的にも距離的にもかなりのギャップがあります。これをなんとか越えていきたいというのが最近のつぶやきです。
つまり、自分がどんな仕事をしようが、社会のこの部分にいつかは反映されて、きっと社会の役に立つことをしているのだ!と認識できないと、人間のやりがいってなかなか生まれないのではないかということです。もちろん、お金が稼げれば仕事はなんでもいいという人も数多くいるとは思います。なんだか、それを最近は疑問視しています。生活費は絶対的に必要ですが、身を削ってまで、多くの賃金を貰う必要があるのか、本当に最低限度の生活費で幸せに暮らせないのか。なぁんてことをふと考えることが多いです。
もしかしたら、過労死の問題が自分の心のなかに引っかかっているのかもしれませんね。
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