『アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方』を読むと、リーダーって実は何もしない方がいいのかも?と思える。


さて、課題図書の読み漁りがちょっと滞っていましたが、最近復活の兆しです。直近で読み切ったのは、これです。

アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方: 一人ひとりの能力を100%高めるマネジメント術 (知的生きかた文庫)


なかなかわかりやすい魅力的なタイトルだと思います。アマゾンで300円くらいの中古品を買いました。小さい文庫本なので、持ち運びに便利ですが、最近は持ち運べるチャンスが少なかったので、やっと読み終えました。

著者について

マイケル・アブラチョフ氏
It's Your Ship
It's Your Ship (英語版の原作)
元アメリカ海軍大佐。機能不全に陥っていた軍艦ベンフォルドの艦長として、同艦を“海軍No.1”と呼ばれるまでに大変革。海軍中にその名をとどろかせた。現在は、その方法論を一般企業で活用するコンサルティング会社を経営している。
出所(プロフィール|マイケル・アブラショフ|ローチケHMV



総合的な感想:部下を信じろ!

 いろんな方がレビューをされていて、かなり評価が高いのがこの本です。リアルなエピソードに基づいたリーダーがどのようにして、部下を育て、アメリカ海軍で一番ダメとされていた軍艦を最強にまで押し上げたのかが、よくわかる構成になっています。いろんなエピソードがあり、それぞれにポイントはあるのですが、私がとにかく強く感じたポイントはただ一つ。

「部下を信じて、部下に任せろ!!」

 リーダーは、これができるかに尽きるということだと思います。部下に任せるということは、その部下は任されたことを一生懸命考えてやり抜こうとする意識が働くので、自ずと自主性や能力の発現が見込めるということです。一方、部下を信用できず、リーダー自らが考え、やりたいように部下を動かすようなことをすると、自主性が育たず、言われたことをやるだけのポンコツ組織になるということ。ま、当たり前の逆説的な話ですけど、この本では、とにかくこの点が強調されていたように思いました。

 それに関連するいくつかの項目をピックアップして記録しておきます。


軍艦(仕事)を離れていく理由は給与ではない

 この本の冒頭では、アメリカ海軍で一番ダメと思われている軍艦に、著者であるマイケル氏が艦長として就任する場面から始まります。新たに艦長になった著者は、まずなぜこの軍艦がダメと思われているのか、を分析することから始めています。これ大事なことですよね。

 すると、乗組員に覇気がなく、上司を信頼できていない現状が見えてきた。そこで、軍艦を最近退職した者に話を聞いて回ると、以下のような事実が明らかになったそうだ。

軍艦を離れていく理由TOP5
  1. 上司から大切に扱ってもらえないこと
  2. 積極的な行動を押さえ込まれること
  3. 意見に耳を貸してもらえないこと
  4. 責任範囲を拡大してもらえないこと
  5. 給料への不満

 これはビジネスの世界でも共通しているらしいです。確かにそうかもしれません。サラリーマンの身としては、やはり給料は最低限ほしいというのが本音です。しかしながら、アルバイトや待遇の悪い派遣社員非正規社員でもない限り、現状の日本企業では、ある程度の給料は支払われるはずです。もちろんその中でも格差があり、大手企業でも貧困層が出てきているという現実問題もあります。一旦そこは置いといてくだされ。
 仕事を辞めたくなる理由として、上記に挙げられている「上司から大切に扱ってもらえないこと」を筆頭に、1位から4位の項目は、仕事として続けられないのではないか?という絶望感を生む状況だと思います。

 この点をきちんと把握したことで、アメリカ海軍で一番ダメな軍艦を最強のチームに向かわせるための方向性がほぼ決まったと言えます。

これは私にとって朗報でもあった。なぜなら、優秀な乗組員が艦を離れていくのに歯止めをかけるために、艦長は、昇級やストック・オプションを与えることはできないが、これは彼らにとってはしょせん五番目の問題であり、上位4つの問題に取り組むことなら可能だと思ったからだ。

(p19)

以下からは、特に気になったキーワードのみ抽出しておきます。


ないがしろにされている才能はないか

 後に優秀な人材となる人のエピソードです。
p63

(彼は、もともとの配属部署を追い出されていた)
 彼は艦に所属して1ヶ月もしないうちに、事務室の効率と手順を改善する方法を提案するようになったが、先輩連中はそれが気に入らなかったのた。階級が下だというだけで何度も辛らつな扱いをされるうちに、彼も諦め、異動を申し出たのだった。

 この彼は、マイケル艦長が求める「自主的にものを考える人間だ」と見出され、飛び級して第一補佐となった。そうなると、その彼はどんどん才能を発揮し、大いに活躍し始めたというエピソードである。
 
 こういった話は、一般企業ではよくある話ではなかろうか。むしろ若い奴は、石の上にも3年てな感じで、目の前のことを一生懸命こなしなさい!というのが当たり前の世界になっているように思います。ま、それも一理あるんですけどね。でも、最近ではとにかく起業のハードルが下がってきて、やる気と根気、その気さえあれば自らビジネスを立ち上げられる世界になってしまいました。そういった人間がわんさかいる中で、まずは3年辛酸を舐めろというのは、周りとの差が開く要因にもなりかねません。少し脱線しているかもしれませんが、組織の中で才能を発現させるには、やはり「ないがしろにされている才能はないのか?」といった視点で、部下やメンバーを見つめることは重要なのだろうと思います。


自由は組織に害となるか?

 軍艦に昔からある規律やルールを変えようとした時の話。

p82

「部下を開放すれば、彼らが新たに発見した自由にどう対応するかはわからない。もしかしたら私は単に混乱を生み出そうとしているだけではないのか?」と。だが、現実にはそれとは全く逆のことがおきた。
(中略)
自由は組織の外となるか? それは自由の質による。エゴをさらけ出す自由ではなく、チームの成果を上げる方法を提案する自由なら、組織にとって大きなプラスとなる。

 上司や管理する人は、どちらかというと部下やメンバーを支配したい、思い通りに動かしたいという欲求が働くのかもしれませんが、それは全く逆効果ということですね。

「失敗しない人」とは「何の挑戦もしていない人」だ

P132

 どんな組織も「危険を冒す人間」を好ましく思わないものだ。だが、生きながらえ、強くあろうとする組織は、ときには失敗しても冒険をする人間を称え、昇進させるべきである。

 これは、企業内ではよくある話かもしれませんね。特に新しいものを生み出す部署では。。。開発職あるあるです。



マニュアルはすぐ腐る

P154

 マニュアルに従っていれば、困った状況に陥ることはまずない。反面、ずば抜けた成果を得ることもほとんどない。そして、あまりにも多くの場合において、このマニュアルはおよび腰な行動の原因となり、本当に重要なものを見えなくしてしまう。
(中略)
 企業で働く人たちも、日頃から、自分たちの仕事において「いちばん大事なこと」をおろそかにしないこと。当たり前のことだが、雑事に追われているうちに、見失ってしまうものなのだ。

 「マニュアル通りに生きたって〜何も始まらない〜」 by B-DASH

B-DASH - 平和島 PV

 懐かしいですね。この曲がわかる人はきっと、高校生で携帯を持ち始めた世代ではないでしょうか?
 マニュアルって、ある意味麻薬ですよね。バイトの子はマニュアルに外れたことをしてもらっては困りますが、正社員はマニュアルにだけ縛られるとろくなことありません。この違いはなんでしょうか?作業を求められるか自主性を求められるかでしょうね。単なる作業員であれば、マニュアル通りでほぼ問題は起きないはずです。もし不測の事態が起きて、マニュアルにはないので対応できなかったとしても、バイトの子らは責められないでしょうね。でも正社員は責められるはずです。「臨機応変にやれよ!」とね。この違いを自分の置かれている立場を正しく認識して、うまくマニュアルと付き合っていかなければなりませぬ。



厄介な敵ー嫉妬心をコントロールするには

P198

 嫉妬やねたみは強い感情で、それに従って行動すれば深刻な問題を生み出しかねない。指導者は常にそうゆう感情に注意していなければならない。嫉妬深い指揮官は往々にして自分の部下を押さえつけるような行動を取ってしまうからだ。
 他のリーダーが成功したときは、その成功から素直に学ぶこと。それが自分の部下のプラスになる場合はなおさらである。

 これは、リーダーに限らず厄介です。やっぱり嫉妬とかしちゃうと、本当に集中しないといけないことがおろそかになります。人間の特性なのでしょうけど、とにかく余計なことを考えずに済む心の状態を保たなければいけません!



最後のメッセージ(訳者解説)

日々の仕事に取り込むべき3つのポイント

「オープン」で「フェア」な環境づくり

 その通り!

ダイナミックな仕事に必要な「4つの力」

「分析力」「判断力」「常識力」「人間力

重視する能力 評価する項目
欧米型 「分析力」「判断力」「常識力」 目標を達成したか
日本型 人間力 どれだけ真剣に取り組んだか
や協調性があったか

 欧米型って冷たいイメージですが、理にかなってるんでしょうね。欧米型にうまく日本型がミックスすれば理想的か!?


必要なときに全力を出し切るための万全の準備

「体力」「やる気・気力・意欲」「能力」それらを保つための「ワークライフバランス

対象とする力 回復方法
欧米型 「能力」「やる気・気力・意欲」 遊びで回復
日本型 「体力」 休みで回復

 このあたりは、日本人は改善しないといけません!
そこのお父さん!休日にごろごろする時代は終わりましたよ! 

 今の若い世代は、仕事終わりや休日は、自己啓発のスクールに通ってみたり、地域の活動に参加してみたり、NPOを立ち上げてパラレルキャリアを築いてみたりと、結構アグレッシブにやってる印象があります。その辺は、時代が変わってきているので、上司世代はついていけないでしょうね。ギャップを認識した上で、うまく付き合うしかあるまい。



この本を踏まえてどう行動するか?

 この本はリーダーの人が読むべきものなのでしょうね。今まさにリーダーの人は、すぐにでも実践に移すべきでしょうね。あいにく、私はまだリーダーには程遠い立ち位置にいるので、いつかその場面が来るまでに備えることにします。
 とは言っても、過去には小さなチーム、小さな単位の活動におけるリーダーをやったことがあり、なんとなく振り返ることもできました。部下とかメンバーに委任していく大事さはなんとなくわかります。特に感じるのは、「厄介な嫉妬心」への対応かもしれません。リーダーが嫉妬心を持っていることが、周囲にバレると結構厄介だと思います。
 
 おそらく、この本は何度も読み返すことになるかもしれませんので、私の本棚の一軍スペースに保管しておくこととします。

以上