『ホンダ流ワイガヤのすすめ』(2015年)を読んで、真のコミュニケーションの重要性を再認識。
いかにして企業からイノベーションが生まれる体質にするのか、そんなことを考えている中で、読む価値があると判断された課題図書です。
ホンダ流のワイガヤのすすめ 大ヒットはいつも偶然のひとことから生まれる
2015年11月に出版されたこの本ですが、ホンダが実践した『ワイガヤ』というコミュニケーション手法について事例を交えて詳しく書かれています。以前レビューした、『ホンダのイノベーションの真髄』でも、ワイガヤの重要性は記されていました。この本は、その詳細解説本といったところでしょうか。
著者について
本間日義(ほんま ひよし)さん
1949年生まれ。1970年に本田技研工業に入社、本田技術研究所車体設計配属。シティ、シビック、アコードなどの車体設計開発プロジェクトリーダーを担当する。1990年、本田技研工業転属。四輪推進本部戦略立案スタッフ(HAST)となる。1995年、本田技術研究所転属、ロゴ、アヴァンシアなどの開発LPL担当する。2000年に本田技研工業転属になり四輪事業本部商品開発総責任者(RAD)として、フィット、モビリオ、スパイク、エアーウェーブ、インサイト、ライフなどの開発を担当する。2005年にホンダアクセス常務取締役就任。2009年に定年退職。2010年、R&D HOMMA代表として、講演、執筆、コンサルタント、社外取締役などの活動に携わる。
「ホンダ流ワイガヤ」実践のコツと方法を、元ホンダ 本間 日義氏にインタビュー |ビジネス+ITより
こうゆう本出す人って、いろんなキャリアを転々としているイメージでしたが、この方はホンダ一筋なんですね。本の中にも書いてありましたが、定年退職して時間ができたので本を執筆したとありました。そして、日本にイノベーションが起きなくなったことへの危機感もあると。
なぜいま、ワイガヤなのか?
第1章では、ワイガヤの具体的方法論ではなく、ワイガヤが必要だと思われる背景が示されています。
日本からイノベーションが消えた?
かつて日本は、世界をあっと驚かせる独創的な商品をいくつも生み出してきた。ソニーのウォークマンや日清食品のインスタントラーメン、ホンダのスーパーカブはその一例です。
ところが近年、このような世界に影響を与えるイノベーティブな製品が日本企業から生まれたという話は、ほとんど耳にすることがありません。
果たしてそうなのか?このへんの検証は個人なりにしたいところですが、確かに「ものづくり」という括り方をすれば、新しい価値は創造されていないかもしれません。一方で、webサービスやゲームなどでは、その限りではないような気がします。捉え方次第ですが、バブルが弾ける1990年代以前には、高度経済成長期という時代があり、日本全体がイケイケで、何かチャレンジ精神にも溢れていたように思います。その時代と比較すると、おそらく元気がないということも言えるのでしょう。
ここで、日本からイノベーションが消えた理由の一つに、「コミュニケーションの停滞」があると主張しています。これは次の節を読むと意味がわかります。
新しい価値は一人の天才が生み出すわけではない
ものづくりの場合、特に大きな事業につながるような高度な商品や技術は、天才発明家のような人が一人ですべて生み出されるわけではないとされています。確かにそうです。
スティーブジョブズが、マッキントッシュやiPodをすべて一人で考えて完成したわけではありませんし、ホンダを見ても創業初期を除いてはカリスマ創業者の本田宗一郎が一から十まで考えて作り上げた自動車やオートバイなどありません。
メディアは、とりあげやすいから一人の天才っぽい人に焦点を当てて、持ち上げたりするので、見ている人が真実の姿を勘違いしてしまう。確かにそんな事象は日常に溢れています。だからメディア取材を嫌う人もいるのでしょうね。
ものづくりは、高い価値、新しい価値を発想し、それをさまざまな技術や手法で実現し、ユーザーに安価で提供して、安心して使っていただけるまですべての力が結集した成果です。
つまり、ものづくりには、「〜開発〜生産〜品質管理〜物流〜営業〜広報〜」などのものづくりに関わる各プロセス(バリューチェーン)のすべてが含まれているということとされています。これはどの業界でもそうだと思います。特にものを作って販売する業態は、ほぼ共通するのではないでしょうか。
イノベーションの原理「スパイラルアップ」
スパイラルアップとは何か?
まずは、一人の開発関係者あるいは開発統括者が、テーマに応える発想や企画の種となるような荒削りにアイデアを出すことから始まります。そのアイデアが呼び水となって、開発技術や生産技術、営業宣伝など、さまざまな人が知恵を出し合います。その知恵が知恵を呼び、一人では到達できない大きな知恵に膨らんでいきます。その結果、他にはないイノベーティブな商品や技術が誕生するー。
このような原理のことを「スパイラルアップ」と呼んでいます。人々の考えが螺旋状に絡まり合っていき、高みへとのぼりつめていく。そんなイメージです。
なにやら、このあたりからイノベーションを起こす方法論としての「ワイガヤ」の必要性、必然性が見えてきました。でもなぜこのような一見あたりまえに見えることができないのでしょうか。ま、これは私も少なからず会社に属して研究職を経験しましたので、なんとなく心当たりがあります。
近年、「日本のビジネスパーソンは自分の頭で考える力が足りない」といったことがメディアなどでよく言われます。つまり「個人の考える力が足りない」というわけですね。ロジカルシンキングの本が売れたり、脳トレの本が若い人にまで売れたりするのは、そこに危機感を覚える人が多いからだと思いますが、私は、ちょとポイントがずれているのではないかと考えています。
いまの日本人に不足しているのは、「集団でものごとを深く考えていくこと」だと思うのです。あるいは、「スパイラルアップを意図的に起こそうとすること」と言い換えてもいいでしょう。
確かに、ロジカルシンキングや思考のフレームワークの本を参考に、業務に持ち込んでくる人はたくさんいるような気がします。でも、ほとんどの場合、うまくいっている気がしません。これは、「その人がその人なりの理解で吸収したものを、部下や他のみんなに強要しているからなのかもしれないなぁ」とか最近思ったりします。カタカナばかり使う上司が、なんだかついて行きたくなくなるようなことはこのことが要因かもしれません。
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コミュニケーションが停滞している原因
コミュニケーションが停滞している原因は、複数考えられます。個人的には、会議で若手が積極的に発言すると「なんだあいつは鼻に付くなぁ」といった雰囲気が出ることも原因の一つだと考えています。逆に、「お、元気なやつがいるなぁ」となると、もっと日本経済も明るくなるような気もしますが。
また、本文な中では、こんな感じ。
よく挙げられる原因の一つは、「リアルコミュニケーションが苦手な人が増えた」ということです。パソコンや携帯電話を使ったやりとりがあたりまえの環境で育ったいまの若い人は、面と向かって人と話すことが苦手になったといいます。隣の席の人に一声かけることをせずにメールする、といった話は、もはや笑い話ではなく、どこの会社でも日常的にある風景です。だから、会議などをしても意見が出てこないというわけですね。
少し論理の飛躍があるようなきもしますが、概ねそうだと思います。近年のSNSの普及は、この現象を加速させまくっていることは間違いないです。しかし一方で、SNSネイティブな若者は、その若者同士でのリアルコミュニケーションはそれほど苦になっていないように感じます。むしろSNSをフル活用している人の方が、オフ会などを開いてリアルに会ったりコミュニケーションを増やしている側面もあるでしょう。SNSを活用して、アラブの春が起きたとも言われています。(実際はそうではないかも??)
zakkuri-intelligence.com
しかし、ここで気をつけたいのは、会社のようなある種強制的に同じ箱に入れられた集団の中では、自分の好きな相手とだけ話をすればいいものではないということです。オフ会で集まるのは、みんな趣味趣向が似ていて、居心地がいいからでしょう。会社はそうゆうわけにはいきませんもんね。だからここでいう、リアルコミュニケーションとは、「仕事をする上で必要なリアルコミュニケーション」と修飾語をつけてもいいかもしれません。
bizmakoto.jp
話が脱線しかけたので、本文に戻ります。次から、コミュニケーションが停滞した原因を4つに整理されています。
原因1:数値偏重のマネジメントは「悪代官」になる?
最近なぜこれほどまでに数値で管理されるようになったのか?いろんな理由がありますが、一つはバブル崩壊後のアメリカ式経営の導入が挙げられています。しかし、うまくいっているとは限らないようです。
(アメリカ式経営の導入によって)日本の企業経営は進化したように思います。しかし、実際にはそういった高度な経営理論を使いこなせなかったり、日本独自の良き経営風土と調和させることがうまくできずに「見かけ上、経営マネジメントが高度化しただけ」の例が多く見受けられるように思います。
企業経営をする上で、経営数値は扱いやすく便利な存在です。「目標は売上高営業利益率10%達成!」といえば、わかりやすい目標ができてしまいます。
ほんとにそうですね。「数値で示せ!」とか「目標値は?」とか、すごく簡単に聞いてくるような気がします。なんだかこれに答えられないと、「能力がない奴」的なみられ方をして、ダメな奴扱いの場合もあり得ます。どうなっちゃったんでしょうね。
しかし、それらの経営目標は所詮ほとんどが「過去においてそうだった」という事実からの推測や「そうあったらいい」という目安にすぎず、その数値を設定すればそれだけで新しい未来が保証されるとというものではありません。実際に眼の前で起こっている現実を見ないで、未来の事業計画数値なるものをどれだけ美しく描いても、それだけでは単なる希望的観測でしかないのです。
(中略)数値目標だけでなく、どんな価値を生み出していくのか、その方向性を示すことが必要です。
にもかかわらず、「会社や製品の価値を高める」という少しわかりにくいけれども一番大切な行為を後回しにして、結果である経営数値ばかりをシビアに求めるのは、悪い言い方をすると悪政で領民を苦しめる「悪代官」のようなやり方です。
・・・悪代官が会社にはいっぱいいます。これは由々しき事態ですね。もちろん良い面もあるのでしょうが、水戸黄門の登場が期待されます。
原因2:「エビデンスを出せ」が創造性を奪う
この節の内容を踏まえて、「数値目標をシビアに求められるとどうなるか?」についてカゼオケ方式*1で整理してみました。
数値目標をシビアに求められる
→ 目の前に掲げられたKPIを達成しようと必死になる
→ 達成できないと困るので新しいことを考えるヒマなどない
→ 過去の成功事例をもとに効率的に仕事を遂行(オペレーション)
→ そうゆう人が人事的には評価される
→ より高度なルーチンオペレーションを実行できるように努力する
→ 新しい発想が生まれる余地がない
→ 新しい価値が生まれない
こんな流れを経て、エビデンスと呼ばれる数値的裏付けを強引に結びつける作業に重点をおいていき、クリエイティブな行動は「余計なこと」として排除されていきます。
原因3:マーケットインにひそむ罠
ここでマーケットインとはなんなのか?簡単に説明すると以下のようなことです。
「マーケットイン」 | 市場や購買者という買い手の立場に立って、 買い手が必要とするものを提供していこうとすること。 |
「プロダクトアウト」 | 技術や製造設備といった提供側からの発想で 商品開発・生産・販売といった活動を行うこと。 |
(参考)
www.jri.co.jp
ま、言葉の通りです。本文では、マーケットインの考え方そのものは決して悪いことではないと前置きした上で、マーケットインを履き違えた場合の問題をこう指摘しています。
よくあるのは、顧客へのアンケートやインタビューを頻繁に行うことです。顧客の意向や状況を分析した膨大なデータを揃えて、そのニーズを探ろうというわけです。それと同時に「上司を説得する証拠をつくろう」という狙いもあるでしょう。
エビデンス!と言われた際にもっとも最初に頭をよぎるのが、この行為ではないでしょうか。確かに手堅い証拠になります。この点では間違いないのかもしれません。しかしここから新たなニーズにはたどり着けないのは当然の理由があります。
しかし、いくらアンケートをやっても、分析データを眺めても、新しいニーズが見つからない、ということはよくある話です。(中略)
その理由は、顧客やユーザーは自分の潜在ニーズを深く分析しているわけではないからです。「潜在」というぐらいですから、自分で分かるはずがありません。まして、そのニーズに応える商品やサービスまで発想することはほぼ不可能です。
その通りですね。「これはわかっているけど、やってしまう」というジレンマ状態にあるのも正直なところです。調査研究の場合、その準備に要する時間や手間の大きさからか、それだけに終始してしまい、次のステップに進めていない事例が多々にあると思います。それでは単なる確認作業に過ぎません。
原因4:高度なオペレーションが品質問題を起こす?
これは一見矛盾しているのでは?と思われる内容ですが、以下のようなことらしいです。
高度なオペレーションは、それ自体に問題があるわけではありません。しかしそこの現場にいる人間の存在を忘れ、それのみを過度に一方的かつ強引に求めると、オペレーションを実行する現場の一人ひとりの自由意志を制限したり、無視したりすることになります。そうした無機的な仕事のやり方、やらせ方をしていると、「自分の担当業務さえやればいい」「余計なことをやって怒られたくない」となり、(各担当業務だけではカバーしきれない)スキマに発生した問題が放置されたり、対応が著しく遅くなったりするわけです。
つまり、高度なオペレーションへの要求は「自分の仕事以外は知らん!」という状態を作るということです。そして、「リーチングアウト」という言葉もでてきました。これは、「自分の領域に隣接する領域にまで手を伸ばすこと」だそうです。これは、別件で話を聞いたシリアルイノベーターの要件にもありましたねー。この辺の話は別途レビューします。
シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀
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ロボットではなく自分の考えをしっかりと持つ、現場で働く一人の人間のあり方こそが、あらゆる想定を超えた小さな問題も見逃さない、迅速・適切・高度な品質オペレーションを保証することができるのです。
とにかく、「人間らしさを取り戻せ!」という論調に偏ってきた感もありますが、それは共感する部分があります。
すべては「自分の考え」から始まる(けど、意外と自分の考えに向き合うことをしたことがない)
私も会社に入って5年間はがむしゃらに目の前のことをオペレーションしてきたように思います。大きな成果はなかったかもしれないけど、与えられた課題を一つずつこなしてきた感は否めません。しかし、入社6年目に起きた人生の転機によって、まさにここでいう「自分の考え」に到達するチャンスを与えられました。「自分の考えに向き合うというのはこれほどに大変なものなのか!?」と思い知らされました。本文ではまさに、「自分の考え」に向き合う重要性が記されています。
ユーザーが欲しがるような、新しい時代の要請に応えられるような新しい価値を作り出すには、何が必要なのでしょうか。
それは「自分の考え」を大切にすること。それがすべての出発点になります。これが、長年、ものづくりに携わってきた私の経験上の結論です。
(中略)
そして、ほとんどの場合、「その自分の考えとは一体どうゆうものなのか」を、初めからはっきりと話せる人はいません。心の深いところにあいまいに存在していて、せいぜい「◯◯のようなモノ」「◯◯っぽい何か」といったぼんやりした表現しかできないものです。初期段階ではアイデアというより、その前段階の「種」のようなものといってよいでしょう。
しかし、そこにこそ、人々の心を動かす真実が隠されています。これはシティやフィットを生み出した上での経験則であり、正直なところ、論理立てて説明するのが難しいですが、純粋な実感を伴った「自分の考え「や「本音」は、その人の本能・感情・美意識・価値観・理性・知識すべてを総合するものであり、その人の生き様や経験がすべて濃縮されています。だからこそ、そこには本物の価値があり、知恵の原点があるのでしょう。
この文の中にある「心の深いところにあいまいに存在していて」という部分がミソだと思います。どうやら人間は、目の前にやるべきことがある場合に限り、本来の自分のやりたいことや考えを伏せて、目の前のことに集中してしまう癖があるようです。そして、私が自分の考えに達するまでに言われ続けた言葉が「魂の叫びに向き合いなさい」でした。なんだか、今考えれば同じようなことを言っていたのだな、と変な納得感があります。
シティにしても、フィットにしても、初期の頃に飛び交っていた意見は「求められているのって、多分◯◯みたいな感じだよね。思いつきだけどな。」とか「自分の個性がアピールできるのがいいよね」とか「みんな身近でカッコ良く使いこなしているケータイみたいな車をつくりたいな」というように、ロジカルさのかけらもない、感覚的な種ばかりでした。
やはり、実際に開発し販売に至ったモノを実例にされると説得力が増しますね。議論の初期からいきなり「機能性があってコンパクトで燃費がいい車をつくるぞ!」と言って、フィットをつくり、大ヒットしていたとしたら、我々凡人は諦めるしかありません。しかし、最初は漠然としているが、自分の考えに基づいて、自分の言葉で議論が始まったということを聞くと、イノベーションってのは、天才が起こすモノだけではないのだな、と実感します。
ワイガヤが新しい価値を生む理由
第2章では、シティやフィットを開発した際の実例を交えて、ワイガヤの効果について面白く書かれています。個人的には、この章がこの本のもっともコアな部分ではないかと思います。なぜなら、実例を交えない一般事項なら、web上でもなんとなくアクセスできる記事があるからです。それにもかかわらず、このブログではこの第2章について、詳しく紹介しません!知りたい人は買って読んでください。
とはいえ、何も表現しないのは面白くないので、印象に残った部分だけ箇条書きします。
ワイガヤで大切なこと
- ワイガヤとは「集団的な議論を重ね、ものごとの本質に深くアプローチし、結果として高い価値やイノベーション(技術革新)を生み出すための効果的なミーティング手法」のこと。
- ワイガヤでもっとも重要なことは「自分の考えを大切にすること」
- 場所は、会社の会議室ではなく、車で30分程度の場所にある旅館や蕎麦屋
- 開発のワイガヤが始まる以前から、業務外の時間で「俺たちが欲しい車研究」というワイガヤをしていた
- 一通り思い思いの意見を述べると、「本間、そんなところを適当にまとめてみろ」と無茶振りされる
- (フィット開発初期)「車進化論」「機能最大、機構最小」といった考え方が生まれた
- 「建前の私」は捨て、本当の「自分の考え」をさらけ出す
- コンセプトを作っては壊しのワイガヤを1年弱続け、「パーソナルMAX」にたどり着いた
- 出てきたコンセプトをかたくなに守って製品づくりをすることでヒットになるフィットが生まれた
ホンダの土壌、本田宗一郎の考え
ワイガヤ環境のつくり方
- ワイガヤのテーマは、「差の価値」ではなく「違いの価値」を生むものにする
- 例えば「10年後に女子高生に泣いて喜ばれるコミュニケーションツールを考えてみようか?」とか
- ワイガヤで簡単に何か出てくると思わず、何度も繰り返すことが重要
- 「そもそもなんでこんなことを議論しているのか?」といったちゃぶ台返しがあったり、試行錯誤を繰り返しながら本質にアプローチする
- ワイガヤで成功体験すると、やめられない。
- 難しいことにチャレンジする気持ちが芽生えてくる
- ワイガヤを共にしたメンバー同士の結束は強くなりやすいので、いつか、必ず他の仕事で力を貸してくれる
ワイガヤを実践する
さて、いよいよ実践です。第3章では、実際にワイガヤを実践しようとする際に、考慮したいポイントが具体的に書かれています。これは、本気でこういった類のものを実践したいと考えている人にとっては、とてもピンと来るものです。もちろんすべてを丸ごとコピーはできないにしても、考慮したいポイントの本質的な意味を捉えることに役立ちます。もうここまでくれば、あまり長ったらしく書いてもしょーがないので、簡潔に行きます(正直疲れてきた)。
メンバー構成:多様なほど良い
- 職種、性別、年齢などが違う人間がそろえばそろうほど、多様な意見が集まる
- 自発的に積極的に意見を述べてくれる「発信型」の人をなるべく選ぶ。「受け身型」の人が多いと、話が盛り上がらない
- 人数は10人前後
避けたい人
- すぐに「でも」「しかし」と否定する人
- 細かいところばかりにネチネチする人
- 揚げ足ばかりとる人
(こうゆう人達って、よくあるまちづくりのワークショップでも浮いているし避けたい人です)
場所:社を捨てよ、街へ出よう
- リラックスするために社外に出る
- オススメは和室(下から目線になりやすい?)
進め方:最短距離で結果を出そうとしない
- ワイガヤの成功の鍵を握るテーマ設定は、「違いの価値を生む」ことが基本
- テーマはスケールが大きいほど、多様な発想を生む
- 「成果を焦らずにフリートーキングする」という共通認識を持つ
リーダーの役割:ムードメーカーになる
- 参加者には「自分の考え」を述べることに慣れていない人がいることを認識する
- 「何をしゃべってもいい」というムードにするために無駄話をする
- いきなり自分の考えを述べると、周りも引くので雑談から入る
議論のコツ:考えを否定しても良い
- 本音でぶつかる「友達感覚」という認識で臨む
- 「意見」は否定してもいいが、「人格」は否定しない
- 本音でぶつかるのはしんどい面もあるので、緩い雰囲気になりがち、要注意
発想を引き出す:「見える化」でプロセス共有
- ポイントを書き込める媒体を用意する(ホンダでは丸J用紙:罫線が印刷された厚手の紙)
- パソコン画面を使うのも手だが、アナログな方が記憶にも残りやすい
- 議事録は一切取らない(大事なのはスパイラスアップの記録ではなく、到達点)
- 丸J用紙が古いものの上にどんどん積み重なって、ある種記録になる
(今なら付箋が多用されているが、もうちょっと工夫がいるかな)
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議論のまとめ:コンセプトシートやビジュアル化
- 議論をまとめにかかる。リーダーでもいいし、指名された人、交代制など。
- ワイガヤの第一目標は、「新しい価値はどんなものなのか、ひとことのコンセプトに集約させること
- まとめるときも「仮のコンセプト」として発表してみる
- その際に、コンセプトシートに落とし込んで整理するのもよし
- ビジュアルイメージを描いてみてもよし
- いずれにしても、仮のコンセプトはどんどん改定していく
- メンバー内での共有、共通認識を高めて、次の議論をやりやすくする
ミーティングや会議でいう議事録では、なんだかそのときのライブ感って伝わりにくいですよね。ワイガヤでは、それさえも変えていけるわけです。
行動に落とす:2階に上げてハシゴを落とす
ホンダの風習なのでしょうか。いわゆる無茶振りでチャレンジさせるわけです。
- ワイガヤでコンセプトが完成すると、現実的な問題がたくさん見えてくる(今の技術では不可能、コストがかかりすぎる、人材不足など)
- 多くの場合、コンセプト実現に対しては逃げ腰になりがち
- そうなると、良いコンセプトだったとしても形にならずに終わる
- そうならないために、元気のある若手を「よし思えならできる!あとは任せた!」とおだてて責任者にしてしまう
- そして、できるまでやらせてみる
- 上司や周囲の人間は、見えないところで強力にフォローはする
- フォローされた経験が、フォローする側に回ったときに生きてくる
権威のあるお年寄りのトップが御輿に乗っているより、はつらつとした若い世代が御輿に乗って、それをベテランが支えるという風景が美しい。
これ、いいっすね。
さいごに
ホンダのワイガヤは、真の顧客価値を深掘りして、商品コンセプトを作り、共感してながらものづくりを進める有効な手段ということがわかりました。
しかし、ホンダ流のワイガヤを実践するには、ワイガヤができる素養が社員に備わっていないといけないことも十分わかりました。これをそのまま他の企業にコピペすることは不可能でしょう。しかしエッセンスだけは抽出し、自社に合うようにアレンジすれば、なにかイノベーションを生む仕掛けができそうな気がしました。
長くなりましたが、以上
読了期間 2016.7.5-7.8
参考記事
toyokeizai.net
demacassette2.hateblo.jp
www.lifehacker.jp
ホンダ流ワイガヤのすすめ 大ヒットはいつも偶然のひとことから生まれる
techon.nikkeibp.co.jp
ddnavi.com
*1:「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざにあるように、ある事象からさまざまな経緯で意外な結果につながることを表現することを私はこう呼んでいます。一般的にはバタフライエフェクトともいいます。