エリアマネジメントについて考えてみる その3(自治会、管理組合との違いを再考)


ちょっと前に書きましたエリアマネジメントについてですが、どうも既存の地域関連組織との違いが未だしっくりこない部分がありますので、再考します。
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紛らわしい言葉がいっぱいあるような。。。


前回記事↓
demacassette2.hateblo.jp
前回は、実際にエリアマネジメントを実践しているであろう団体や会社をレビューすることで、現代のエリアマネジメントとはどんなものなのだろうかと考えてみました。しかし、考えれば考えるほど、「町内会とどう棲み分けるの?」とか「マンションの管理組合とにているの?」といった本質的な疑問から抜けられなくなります。というわけで、これまで当たり前だった既存組織のなりたちから確認してエリアマネジメントとの違いをはっきりさせたいと思います。

町内会について

まずは最もポピュラーであり、今は若い世代に敬遠されている町内会についてです。

Wikipediaによれば

町内会(ちょうないかい)は、日本の集落又は都市の一部分(町)において、その住民等によって組織される親睦、共通の利益の促進、地域自治のための任意団体・地縁団体とその集会・会合である。また、その管轄地域のことを指す事もある。

つまりは任意団体なので、加入は任意です。が、実質的には強制になっているようですね。そこが現代の問題として取り上げられています。

www.nhk.or.jp

でも、これって正常な動きですよね。実態がよくわからない町内会に入らないという判断は、不透明なものにお金を投じない正常な真理だと思います。逆に町内会がうまく動けていたのは、なんでなんでしょう?

町内会の成り立ち

再びWikiさんより

元々は1937年の日中戦争の頃から日本各地で組織され始め、太平洋戦争の戦時下に大政翼賛会の最末端組織として1940年に市には「町内会」、町村には「部落会」が国によって整備されたのが起源であるとされる。戦時下には内部に「隣組」があった。戦前においては、戦争遂行に大きな役割を果たした。


大政翼賛会(たいせいよくさんかい)???

なんすか、これ?リアルタイムで知ってる人いたら教えてください。1940年頃の話なので、当時30歳の人は今は105歳!生の声を聞くのは難しいですねぇ。

町内会、なんだか怪しくなってきましたねぇ。確かに戦時中は空襲の時とか訓練の時とかに近所の人と助け合って難を逃れるみたいな映像や歴史認識はありました。これが隣組っていうやつですね。このあたりの地域自治組織が由来となって町内会ができたとしたら、戦時中は確かに役割がはっきりしてよかったけど、平和になった現代に合ってるの?と考えると疑問ですね。

参考:隣組 - Wikipedia

現代に隣組の機能は必要なのか?ゼロベースで考えればいらないかもしれません。


自治会について

ほぼ、町内会と同じのようです。単に名前が違うだけという解釈で良さそうです。

ただし、現代の街中に商店街などがある場合、商店街の店主で作る商店街連合会とかもある意味で地域で活躍する団体ですよね。これは住民がまちの維持管理のためにやるというよりは、商店街で商売をしていく上での商業的戦略にもつながる、かなり経営よりな組織かと思います。この辺については必要であれば、別途考えましょう。

www.ginza.jp
さすが銀座。連合会HPもかっちょええー!

管理組合について

管理組合といえば、思い出すのはマンションの管理組合でしょう。マンションの場合、ある一定の土地にある規模の建物が建ち、そこにみんなで居住するという形式をとるので、戸建て住宅のように「ここの土地と建物はあなたのものです!」という明確な所有形態をとれません。一般的に分譲マンションは区分所有権という形式で、マンション購入者に所有権が与えられるようです。

www.mitsui-kanri.co.jp

詳しいことはここでは割愛しますが、ある意味で財産を共有している人たちがきちんと意思決定や情報共有ができるためには、ある程度しっかりした組織や体系があったほうがいいですよね。なので管理する団体(組合)を作りましょうよ→管理組合となったようです。

管理組合 - Wikipedia

Wikipediaによれば、

マンションや団地の購入者は、区分所有法に基づき区分所有者となる。購入した区分所有部の内側は専有部分として自由に使用する権利を得ると同時に、廊下やエレベーター、配管などの共用部分(専有部分以外の全て)を全区分所有者と共同で維持管理する義務が生じる。居住せずに所有する専有部分を賃貸とした場合でも、共用部分の維持管理をする義務に変わりはない。

各物件を購入した区分所有者に引渡しが始まると、区分所有法に基づき管理組合の最高意思決定機関である総会が招集され、管理組合が設立される。同時に管理組合の法律ともいえる管理規約が承認される。区分所有者は組合設立とともに必然的に組合員となることとされておりその運営に携わることになる。日本以外でも管理組合に相当するHomeowners' association (HOA)などと呼ばれる管理組織が法律などに従って設けられることがある。

直接的には、管理規約に基づき、総会にて選出する理事長・会計の2役員と、マンションの規模に応じた人数の理事によって構成される理事会、理事会を監査する監事が組合運営を行う。

つまり、マンションの管理組合はあくまで自分たちの所有する(共有する)財産をみんなで適切に管理して守ったり、改善したりしていきましょうという組織だということですね。これって、自分の所有物を守ろうとする生物の利己的な性質から来るものとも捉えられますね。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

人間も利己的な生物の一種ですね。

では、エリアマネジメントは?

 さいごに、肝心のエリアマネジメントはどの立ち位置になるのか再考します。

エリアマネジメントの成り立ち

エリアマネジメントでググると、真っ先に国土交通省のHPがヒットしますね。
tochi.mlit.go.jp

エリアマネジメント推進マニュアルWEB版によれば、

 近年、「エリアマネジメント」という、住民・事業主・地権者等による自主的な取り組みが各地で進められています。例えば、住宅地では、建築協定を活用した良好な街並み景観の形成・維持や、広場や集会所等を共有する方々による管理組合の組織と、管理行為を手掛りとした良好なコミュニティづくりといった取り組みがあります。また、業務・商業地では、市街地開発と連動した街並み景観の誘導、地域美化やイベントの開催・広報等の地域プロモーションの展開といった取り組みもあります。

ここで言う、近年とはいつでしょう?
先のwebページの下の方にある「エリアマネジメントのすすめパンフレット」を見ますと、主に環境美化活動についての指針が掲載されています。発行年は平成22年担っていますので、エリアマネジメント推進マニュアルもこの頃に整備されたものだと思われます。少し古いですね。

一方、「リノベーション・エリアマネジメントによるまち育て」というPDFを開いてみると、最近っぽい事例が多く掲載されています。リノベーションまちづくりという言葉も最近使われているものですね。発行年をみると、平成27年3月!!やはり新しい。

どうやら、近年(2013-2015)の空き家再生や地域リノベーションの事例をまとめて、この事例集にしているようですね。北九州家守舎なんかは前回ご紹介したものです。

エリアマネジメントのあるべき姿

 これはとても難しいことです。もし理想的な地域マネジメント像というのを描いている人がいたら教えて欲しいくらいです。既存地域はそれぞれの地域性をもとに多様に成長、進化しており、どれもこれも一律に同じ制度を当てはめてしまうのは違和感ありありです。それでもあまり事情をよく知らない人は、「うちの地域でも銀座の仕組みを導入しようよ」とか「北九州のマネをしてみようぜ!」とか安易に考えたくなる人がいます。それが間違いだとはあえて言いませんが、銀座だって北九州だって、一直線に今の答えにたどり着いたわけではないと思います。紆余曲折、苦節10年なんていう話はザラだと思います。ですので、「まずはいい事例をトライしてみて、ダメだとわかればすぐ軌道修正しよう!」くらいのスタンスで臨むことが大事かと思います。失敗は付き物ですが、それをどこまで許容できるか。

 もし、エリアマネジメントの仕組みを考える立場になるのであればそう考えたい。そして、安直に答えを求めたがる人に対してどう説明していけばいいのかも考えておきたいですね。地道に説明し続けるしかないのでしょうか。実績を積んでギャフンと言わせるしかないのでしょうか。参考図書は世の中にかなり出始めてます。本だけではわからないので直接現地や関わった人に話を聞きに行くことも可能でしょう。


まだまだ勉強不足な部分は否めませんが、チャレンジを続けます。

では。