新国立競技場整備事業から施設建設計画を学ぶ3(A案に決定の決め手は?そして新たな火種が)
一連の新国立競技場のデザインコンペはA案に決定しましたね。前回の勝手に採点内容はさておき、予想は当たりました。パチパチ/
A案のファサード
mainichi.jp
www.sanspo.com
自己採点と比較
決め手は、工期短縮の実現性ということで、私が勝手に採点した"施設計画"という項目では実はB案の方が評価が高いようです。
www3.nhk.or.jp
自分の採点と比較(なんか点のつけ方の桁が違うんですけど、これは審査委員が7人いたらしいので、各項目70点満点で採点されているようです、)
※上段:デマカセット的採点、下段:JSC審査委員会の採点
審査項目 | A案 | B案 | 予想の的中 |
---|---|---|---|
ユニバーサルデザイン | A(10) 48 |
A(10) 53 |
× |
日本らしさに配慮 | A(10) 50 |
B(8) 52 |
× |
環境計画 | B(8) 54 |
A(10) 50 |
× |
構造計画 | A(10) 52 |
A(10) 55 |
× |
建築計画 | A(10) 42 |
B(8) 60 |
× |
合計 | 48点 246点 |
46点 270点 |
× |
え?A案負けてる!!
しかも、全部予想が逆をいっています!ガーン( ̄◇ ̄;) なんか、自分の感性が悲しくなってきますね。技術提案書も表面上しか読んでませんのでまぁ当然かも。
報道されているように、A案はとにかく「工期短縮」と「業務の実施方針」が高い評価を受けたということになります。しかも、双方の点数は比較的低めなので、私みたいに甘々な採点ではなくかなり辛口だったということでしょうか?
A案はザハ案のパクり??
新たにこんな疑惑も浮上して結構叩き合いになっているようです。
lite-ra.com
記事の中からいくつか気になる点を抜粋してみます。
実際、選ばれなかったB案の設計者である伊東豊雄氏も会見で、「表層部分は違うが、(国産木材を多用する装飾を)はぐと、中身はザハさんの案とかなり近い」「訴えられるかもしれないですよ」と警告を発した。
ま、これはA案サイドも作っている中でわかっていることでしょうから対策は打てているはず。デザイン特許とかあるのかな?
ポイントは、施工業者が大成建設という点だ。大成建設はザハ案でスタンド工区=観客席の工事を担当することになっており、それにあわせて、すでに大量の資材や下請け業者をおさえていた。
これだと、もし失注すれば会社的に大変なことになりますね。下請け業者の仕事なくなるので補償問題とかに。
また、「日刊ゲンダイ」は、〈菅官房長官の子息が大成に勤務していることも、さまざまな憶測を呼ぶ理由となった〉と書いている。
こんなん言い出したらコンペとか金かけてやるなよ!ってなりますね。
森山氏のブログによると、新国立の予定地は地盤が悪く、旧国立競技場の基礎杭が数多く残置されているのだが、両者の技術提案書を読み比べると、古い杭の早期撤去や残土の縮減計画をかなり具体的に提案しているB案に対して、A案はまったく具体的なことを書いていないのだという。
さらにスタジアム屋根工事についても、仮設支柱をたてるA案に対して、自立工法をとるB案のほうが1〜3カ月工期を短縮できる可能性があると、森山氏は指摘する。
B案に関しては、森喜朗氏が大喜びするような、あざといデザインという問題はあるが、少なくとも、技術的にはA案より圧倒的にきめ細かい設計がなされていたのは間違いない。
それは完全に見逃してましたね。技術提案書の構造の部分を見返す必要がありますが、今はそんな元気はありませんw
「声明でも知的財産権がハディド氏にあることを強調していますし、その可能性は高い。せっかくコストを抑えたのに、巨額の賠償金をとられるなんてことにもなりかねない。そもそも、政府もJSCもひた隠しにしていますが。実際は、ザハ案白紙撤回にともなう補償金は他にも発生する可能性があり、トータルすると、ザハ案と同じくらいの金額になりかねない」(全国紙社会部記者)
・・・ヤバイですね。いろんなことが悪い方に行く可能性も秘めているということですね。
どこで間違った?データサイエンス的根本分析
こうゆう問題っていろんな事象が良くも悪くも重なって起きたりしますよね。社会データを見る立場として、荒っぽいですが少しだけなぜなぜ攻撃をしてみます。
なんで再コンペやったの?
→ザハ案が白紙撤回になったから
なんで白紙撤回になったの?
→施工費や工期が現実的ではなかったから
なんで現実的ではないのが選ばれたの?
→デザインコンペなのでそこが審査対象ではない。もしくは審査委員(運営側)が無能。
なんで審査委員(運営側)が無能なの?
→正直わからないけど、東京オリンピックを実現したらいいことがある人たちがいるからか?
なんで東京オリンピックやったら嬉しい人がいるの?
→オリンピック景気によって経済が回り、政治的には効果ありだから?
なんで政治的に効果ありなことをしなければならない?
→経済力を高めることこそ、価値があると思っているから?
なんで経済力が価値があるの?
→世界の国の力がGDPなんかで計られているからか?
・・・これ、いつまで続くの?
ってな感じで、公共事業的案件は基本的には景気への起爆剤だと認識しています。東京オリンピックなんて別に国民全員が望んでいたわけでもないでしょうし、スポーツ界の人の中にも「別にそんなもんやらなくても・・・」みたいなスタンスの人もいるのではないでしょうか?
建物を建てるとか心地良い空間を創るというのは、とても創造的で魅力的な仕事ではありますが、まずはその大前提から問い直すことが大事だな、そんな気持ちになりました。
一旦、このシリーズ終了。
これまでの記事一覧
「新国立競技場整備事業」から施設建設計画を学ぶ0(再コンペ案公表) - Without Me
新国立競技場整備事業から施設建設計画を学ぶ1(再コンペ案をよく見てみる) - Without Me
新国立競技場整備事業から施設建設計画を学ぶ2(どんな基準で最終決定?勝手に採点してみた) - Without Me