『シリアルイノベーター「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀』を読み、イノベーターへの道筋を妄想する。


とあるセミナーに行ったら、この本を紹介していたので気になって即買い。

シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀

シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀

シリアルイノベーターとは、一発屋のイノベーターではなく、連続的に(シリアル)イノベーションを起こす人のことをいうらしいです。初めて知りました。

ボリューム多いので、かいつまみレビュー。


内容は、日本の話ではないので、あまり馴染みがないですが、タイトルにもあるように「非シリコンバレー型」ということで、日本でも適用可能性があるものとして、馴染みやすいのではないか、という紹介のされ方でした。

でも、読むと大変小難しいですね。言っていることはわかりますが、なかなかおっしゃるようにはいかないだろうと思います。ボリュームも多いので、特に気になったシリアルイノベーターの特性に関する部分を記録します。

著者

Abbie Griffin 氏(アビー・グリフィン)
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出所:Abbie Griffin 教授 特別セミナー | 広島大学

プロフィール
イノベーション研究の大家として知られるユタ大学マーケティング学部教授。
同大学デビッド・エクルズ・スクール・オブ・ビジネス、Royal L.Garff記念講座教授。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校教授を経て現職。大学での指導、研究に従事する傍ら、大型トラックメーカー、ナビスター・インターナショナル取締役を務める。
Journal of Product Innovation Management誌編集委員(1998~2003年)。


(ちょっと脱線)
広島大学のセミナーHPに掲載されている、キューピーのブーストゲート法とは何か??
企業価値向上のためのトップと現場のつなぎ:研究:Chuo Online : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
これは、参考になりそうなので、後ほど詳しく。。。


内容

 まず、シリアルイノベーターとは何か?

長い歴史を持った大企業でミドルという難しい立場にありながら、「シリアル(serial)」、つまり幾度ともなくイノベーションを起こす人のことだ。それが本書の題名でもある「シリアルイノベーター」である。


この本に関しては、結構様々なところでレビューされています。
dentsu-ho.com
www.lifehacker.jp


シリアルイノベーターの特性:MP5モデル

 シリアルイノベーターが備えている(備えるべき)、特性をMP5モデル(Mが一つ、Pが5つ)として6つの特性を定義し、わかりやすくポイントが記されています。

p74

パーソナリティ(Personality)

クリエイティブな考え、好奇心、曖昧さに対する耐性、システム思考。
製品全体の機能性について検討する。

パースペクティブ(Perspective):仕事観

独自の視点、新商品を出して利益を生むという強い信念、技術は手段にすぎない。
生み出した商品は必ず売れなければ意味がないと考える。

モチベーション(Motivation):やる気

未解決の課題に取り組みたいという欲求

構え(Preparation)

生涯を通じての学習者、正規の教育プログラムではなく自身の活動の中で学んでいく。
仕事をしながら学び続け、知識領域を広げていく。生涯を通じての学習者。


以上、4つは入社前からある程度備えておくべき資質

プロセス(Process)

プロセス全体を通じて顧客と技術、市場の間を行き来する。最初に、顧客の真の課題を見つけることに取り組み、続いて技術の世界に没頭する。開発中のものでも市場に持ち込んで評価をする。通常、課題を見つける活動はブラックボックスになりがちだが、シリアルイノベーターは広く公開しながらやる。製品の発売後も使用感や改善点を探しに回る。次に何をすべきかを知りたがる。

社内政治(Politics)

他者にアイデアを売り込むことが必要だと知っている。マネジメント層(上方向)、仕事を進めるのに必要な人々(横方向)、顧客や必要な専門知識を持つ人々(外部)に対して売り込む。

re-public.jp


社内政治の現実を受け止める

p187

自らも行動して組織を動かさなければ、自分の生み出したものは見過ごされ消えてしまう。

これが、最も大変なことだと思います。どんな会社にでも、政治的な何かは存在するかと思います。それは一見して、自分の力ではどうしようもないと思えるかもしれないけど、実は関われる余地もあるかもしれない。そんなことが書かれていたように思います。

そして、どんなにいいアイデアでも、誰かに認められなければ意味がないと。さらに、会社内で最も権限があり、資金調達のためにはベストな相手(例えば社長)だと思っていても、いざその相手を説得しても、実はダメだということを知らされる。そこで改めて、関係者全員の承認が必要なことを思い知らされる。しかし、シリアルイノベーターは、それを厭わない。自らが生み出したい商品や事業のためには、いかなる苦労も突き進むということなのだ。

といった感じのことが書かれていました。シリアルイノベーター、おそるべし!

読者へのラブレター(○○なあなたへ)

 この章がなんともグッときました。ここまでこの本を読んでいくと、かなり心が折れかけます。なぜなら、シリアルイノベーターは、ほぼスーパーマンなように見えるからです。こんな人いるのか?と疑いたくなるくらい。さらに、「今の俺の年齢では手遅れだ。」とか「私にはそんな覚悟はないなぁ」とか。

 こんな感情が芽生えた時に、この章は役立ちます。それぞれの立場に対してのアドバイスが書かれています。記念に、ラブレターの相手先を全て書いておきます。

シリアルイノベーターのあなたへ

 最も恐れるべきは、今の会社での目的を失い、別の自身をフォローしてくれる会社に行くことだ。あなたしかできない仕事がまだこの会社にはあるから、別の会社には行かないでほしい。

シリアルイノベーターを目指すあなたへ

 あなたが見習うべきシリアルイノベーターと、あなたを育ててくれる技術マネージャーが近くにいなければ、その人を探しに行こう。

シリアルイノベーターの同僚  ー技術開発者、チャンピオン、製品開発担当者であるあなたへ

 シリアルイノベーターは、あなたの支援なしではイノベーションを成し遂げられない。シリアルイノベーターの特性を理解し、協力してほしい。

学生であるあなたへ

 まず自身の強みや弱みを理解し、モチベーションを高め、磨くべき専門分野に打ち込んでほしい。

技術マネージャーのあなたへ

 まず、あなたがいなければシリアルイノベーターは誕生し得ないことを認識してほしい。会社の未来はあなたの手の中にあるといっても過言ではない。

人事マネージャーのあなたへ

 成熟した企業の中で、シリアルイノベーターは通常の人事制度では計れない要素が多分にある。中長期的に見たシリアルイノベーターの重要性を理解し、それを伸ばす努力をしてほしい。

最高技術責任者(CTO)のあなたへ

 あなたの任務の一つは、イノベーションが起きる場所をつくることだ。そのためにシリアルイノベーターの居場所作りに専念し、長期的視点で投資を行うべきである。

最高経営責任者(CEO)、社長のあなたへ

 シリアルイノベーターが居心地のよい場所を持てるかどうかは、あなたにかかっている。

附録 シリアルイノベーターを特定るすための質問例

 実は、この最後の付録が最も重要なのではないか?と思うくらいなのである。ここに記されている質問例は、面接などでの使用を想定しているが、普段の会話の中でも、何気なく相手にこの質問を投げかけて、どう反応するかをテストすることが可能らしい。

 ここに書かれた質問例をぶつけてくるやつには要注意だ!!
(質問例については、本をご参照下さい)


感想

 正直、この本は、非常に読みにくかったです。これまでも原文英語の本を読んできましたが、ベスト3に入るくらい読みにくかったです。しかし、何度も読み返しているうちに、本質的なこと、自分が知りたいと思っていたポイントじみたことが見えてきました。

 基本的に私自身は、シリアルイノベーターではありません。しかし、そういった人と仕事をしたいと思っているし、そうゆう人を育てないといけない立場にいます。(年齢的というより部署的に) そのため、これから同世代の同僚をシリアルイノベーターに近づけていくには、こちらサイドとしては、並大抵の知識ではダメで、彼らを超越する知識を備えた上で、賛同してもらう必要があります。

 最もよい方法は、自分自身がシリアルイノベーターとしてのロールモデルとなり、その背中で語るというものなのでしょうが、この本でも書かれている通り、シリアルイノベーターも一人では何もできません。いろんな人を巻き込んで、自らの意思を貫き、イノベーティブな製品を生み出しています。

 そして、誰しもがシリアルイノベーターになる可能性は秘めている!と言いたいところですが、MP5モデルの特性にもありましたように、ある程度備えておくべき素養がありますので、それは見極めないといけないのかもしれません。

 ヒトという生き物とのかかわりですから、一筋縄には行かないでしょう。それでも、高い目標・理想を掲げ、それに向かって突き進むしかありません。と思った今日この頃です。(少し自分の突き進みたい道を迷いつつある時期なので。。。)


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購入日:7月11日
読了日:8月頃(最終は、2017年3月頃)