いつかギャフンと言わせたい

平凡な企業研究員が、いつか周りをギャフンと言わせるための野心的かもしれないゆるい記録

『オープンイノベーションの教科書』(2015年)は、ほんとに教科書として持ち歩きたいレベルの良書。

どうやら今月は『課題図書読み漁り月間』のようです。4月に入ってから模索、妄想していた構想がほぼ頭の中にできつつあり、それを現実の事例で検証している感覚です。これが終われば、あとは実践なのですが、このプロセスを怠ると、とっても間違った方向にブレていく可能性もありますので、出来うる限り慎重に勝つ大胆に取り組んでいます。今回の課題図書は、こちら。

オープン・イノベーションの教科書---社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ
もろです。思いっきり今妄想していることを確認するためにはベストな題材です。もっと早く見つければよかった?いや、こうゆうのは、自分の意識レベルがどんぴしゃの時に読んでもまだ間に合うと信じています。

著者について

星野達也さん
1972年生まれ。東京大学工学部地球システム工学科卒業、同大学院地球システム工学科修了。修了後、大学院時代を過ごしたルレオ工科大学(スウェーデン)で客員研究員として研究を継続。専門はダイナマイトによる岩盤発破の最適化。
1999年、三井金属に鉱山技術者として入社。2000年、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。製造業界を中心に、経営戦略策定、新規市場参入、マーケティング、コストカットなど多数のプロジェクトに従事。2006年、ナインシグマ・ジャパン設立に参画。設立後、これまでに100社以上の大手メーカーのオープン・イノベーション支援に携わる。 また、国内の大学や中小企業の技術を世界に発信することにも力を入れ、大学の産学連携本部や地方の産業振興団体との連携強化にも注力している
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経歴出所「シンカ、サンカ、センカ?プレゼンボード|SYNQAブックセレクション

【所属】
株式会社ナインシグマ・ジャパン顧問
一般社団法人オープンイノベーション促進協議会理事
www.ninesigma.co.jp
一般社団法人 オープンイノベーション促進協議会
toJOINとは|理事のご紹介



見た目もかっこいいですねー。そして、得体の知れないマッキンゼー出身者です。ほんとマッキンゼーってなんなんですか??


オープンイノベーションとは

 さて、そもそもオープンイノベーションとは一体なんなのでしょうか?共同研究、共同開発とは何が違うのか?紐解かれます。

最初にオープンイノベーションという言葉を唱えたハーバード大学(当時)のヘンリー・チェスブロウ教授は、オープンイノベーション「企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること」と定義している。ただ、これは極めてあいまいな言い回しであり、読み手それぞれが異なるイメージを持ってしまうことが多い。

(本文p11)

提唱者:ヘンリー・チェスブロウ教授

オープンイノベーションという言葉を最初に提唱したのはこの方だとされています。
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なんだか穏やかそうな人ですね。ハーバード・ビジネス・スクールで助教授をされていたときに、提唱されたのだとか。

OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)

OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)

オープンイノベーション 組織を越えたネットワークが成長を加速する

オープンイノベーション 組織を越えたネットワークが成長を加速する

もう10年以上も前から提唱されているのですね。日本はやはり遅れている??
本書の中に、もし企業内でオープンイノベーションを推進しようとした場合、上層部から「なにそれ、実績あるの?」とか「やって意味あるの?」とか言われたときは、『もうすでに欧米では導入済みで、実績もでていますよ』と返せば良いと書かれています。なるほどです。


enterprisezine.jp
www.innopedia.jp


オープンイノベーションが求められる決定的な背景

 日本がものづくり界において、王者的立場だった時代は、自分たちで研究開発していれば、それで製品ができ、商品が売れていたのかもしれません。しかし今は状況が変わってしまった。

研究開発において、常に「競争に勝つために到達すべきレベル」(Must do)「自社で到達できるレベル」(Can do)の間に乗り越えなければならないギャップが生じる。以前であれば、そのギャップを埋めるためには「自分たちで頑張る」ことが一般的な姿であったが、昨今、求められるレベルが高まる一方で、達成するまでに許される時間はどんどん短縮しているのだ。その結果、ギャップを埋めるためには、「既存のネットワークの外の技術を活用する」という発想に変わってきているのである。

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A:競争に勝つために達せすべきレベル
B:自社で到達できるレベル
C:ギャップ


つまり、もう今の時代は、自分たちで頑張る!というプロセスでは、他社に勝てなくなってきたわけです。そして、今は他社の範囲が広い。世界中に情報は飛び回っているので、日本の企業が日本国内の市場だけ見ていればいいということは全くないし、世界の大中小企業が、日本の市場も見ているということです。そう言われると、「自分たちで頑張る!」とか「自分たちの狭いお付き合いの中で共同研究する!」とかでは、革新的でかつ、競争を勝ち抜くレベルの研究開発、製品開発ができるとは思えません。

オープンイノベーションの誤解をひも解く

 オープンイノベーションと聞くと、従来の共同研究とか委託研究とはどう違うの?という素朴な疑問が湧いてきます。先述のオープンイノベーションが求められる背景を理解できれば、あまり誤解は生まれないのですが、なかなかすんなり理解しやすい部分ではないので、少し詳しく見てみます。

 オープンイノベーションと聞いて、「アウトソーシング」をイメージする人も多い。そん結果、空洞化や技術情報の流出などを想像し、アレルギー反応を起こすのである。しかし、それは大きな誤解である。オープンイノベーションは「インソーシング」であり、技術の強化なのである。
(p57)

こうゆわれると、「確かに違ってそうかな」とも思えるのですが、いまひとつ実感がわかない部分もあります。

 アウトソーシングとは、コスト削減などを目的として、本来社内に保有していた機能、例えば生産設備などを、社外組織や第三国に委託することである。その際には、委託先に十分な技術力がないので、技術指導をともなうこととなる。そこで技術やノウハウの流出が起こるし、車内から社外へ移した機能・設備の分だけ空洞化が進むのだ。

 一方で、社外技術の探索は、社外の優れた技術を自社内に取り込むことであり、アウトソーシングとは真逆にある。技術やノウハウの流れは、「外から中」であり、技術の流出を気にするのは、むしろ技術を提供する側である。さらには単に技術を買うだけでは使えないので、必ず何らかの追加開発が必要となる。そのため、最終的には自社に特化したオンリーワンの技術が確立されることとなるのである。

 こう書かれると、もう納得するしかありません。共同開発はアウトソーシングではありませんが、性質は似ていると思います。オープンイノベーションはあくまで、「社外技術を自社に取り込むこと」なので、確かに技術課題や解決手段を公表し、業界に知られることにはなりますが、重大な技術やノウハウの流出はコントロールできる範囲だと認識できます。

 また、技術の取り込みということなら、知的財産の扱いも明確になりそうです。最終的には自社で使える形にする必要があるので、ライセンス料での縛りがある技術を買うというよりは、自社に向けてアレンジしてもらって共同出願するといった形も可能性としてでてきます。

 自己中心的な考え方・手法とも考えられますが、協業先にもメリットがある形で、自社に最大の効果をもたらすことがオープンイノベーションの醍醐味なように思えてきました。

 さらに、もう一つの個人的誤解は、
「オンリーワンの技術は、自社だけで開発することこそ大事」
と思っていたことです。これは、意外にも多くの人が潜在的に思っているのではないかと思います。確かに自前主義で、自社内のリソースで生まれた技術は、間違いなくオンリーワン技術でしょう。しかし、本文にもあるように「自社に特化したオンリーワンの技術」とすれば、別に自前でやらなくてもオンリーワン技術は作れるような気がします。

 つまりは、競争を勝ち抜くには、隠してばっかりでは無理で、思い切ってやってみたものが勝ち残るということでしょうか。変化に対応したものだけが生き残るというダーウィンの進化論そのものですね。

 次に、実例をもとに、オープンイノベーションのすごさを実感したいと思います。



プリングルスのオープンイノベーション事例

プリングルスは、日用品の意外なところまで商品を作っているアメリカのP&Gプロクターアンドギャンブル)社の商品です。プリングルスはほとんどの人が知っているでしょうが、これがP&Gの商品だということはあまり意識しないと思います。「ミスタードーナッツってダスキンの関連会社なの?」という感覚に少し似ているでしょうか。
プリングルス 14本アソートセット [並行輸入品]
・・・すごい種類

商品アイデアが出たが、自社では解決できない!

ある新しい商品企画の際にオープンイノベーションによる解決を試み、うまくいったとされています。

 ある年、パーティシーズンを前にして、P&Gの商品会議では、どうすれば自社商品のプリングルスが売れるかを議論していた。一人の社員が「チップス1枚1枚に、クイズやことわざなどを印字してはどうか」というアイデアを出した。その発想にみな同意はしたが、当時のP&Gには、揚げる前のポテトに文字を印刷する技術がなく、自社でやろうとすると、可食性インクや印字技術の開発などが一から必要になる。パーティシーズンまでの時間的な制約を考慮すると、自社単独での解決は不可能であった。

そもそも、こうゆう前向きな会議が行われているということだけでも羨ましいですが、何かアイデアが出た時に、どう実現するかを考え抜くという基本スタンスが元々あるのだろうと想像できます。日本の場合、どちらかというと、できない理由を探してしまいそうなところです。

オープンイノベーションの試行

そこでP&Gは、オープンイノベーションによる解決を試みたのである。
「湿った柔らかい食材に、可食性インクで文字を印刷する技術」
として世界中から提案を募った。
(中略)
イタリアのベーカリーからの技術を導入することで、パーティシーズンに間に合う形で「プリングルス プリントチップス」の投入が実現。結果として、その商品が大ヒットして大きな利益を得た。

 なんだか、この募集テーマにセンスが感じられます。公募の場合、募集している企業イメージや報酬額にもよりますが、やはり募集テーマに魅力や具体性がないと、誰も反応してくれないように思います。例えば、「もっともっと売れるポテトチップスのアイデア募集!」だと全然ダメなのでしょうね。でもこうゆう募集の仕方しているコンペってよく見ますけど。

オープンイノベーション試行の結果

 このケースはオープンイノベーションの価値がどこにあるのか見せつけているとされています。

  1. 自社が求めるべき技術(食品への印字技術)を見極め、
  2. 技術的な表現でわかりやすくコミュニケーションを作成し(可食性インクで湿った柔らかい食品に文字を印刷する技術)
  3. 自社のネットワークを超えて世界中から技術を集め、
  4. 素早く導入することで製品化のスピードアップを実現し、
  5. 大きなインパクト(売り上げ増)につなげた

 やはり最後は結果なのですね。結果を出すための手段としてオープンイノベーションを試してみたら、売り上げ増という結果が出たという成功例だそうです。

 このほかにも、第3章では技術の探し方の事例として、東レ、味の素、大阪ガスデンソー、医薬品業界の5つの事例が、第5章では、技術の売り方に関しての事例として、帝人、ハタ研削、JAC(ジャパン・アドバンスト・ケミカルズ)、香川大学の4つの実践事例が紹介されています。個人的には、大阪ガスと医薬品業界、香川大学の事例が印象的でした。書き出すと長くなるので、ここではプリングルスの例だけにします。


オープンイノベーションを実現するには

 事例が多く紹介されている中で、第2章でまとめられているのが、実際にオープンイノベーションを実現して、新たな研究体制、製品開発プロセスを作っていくためには何が必要なのかです。

技術探索型オープンイノベーションの4つのステップ

 ステップとしては、目次から引用できます。これはあくまで技術探索型のオープンイノベーションの場合です。しかし、基本的に日本企業が求められている改革は、自前主義からの脱却ですので、自社でできない技術を外部世界から探索するという方向性がメインになると思います。

ステップ 内容
ステップ0 啓蒙活動の実施
ステップ1 社外に求める技術の選定(What)
ステップ2 技術の探索(Find)
ステップ3 技術の評価(Get)
ステップ4 技術の取り込み(Manage)

 それぞれについて、本文内で解説してありますが、「オープンイノベーションに王道はなく、自社でトライアルしながら体制を構築していくべきだ」とされています。なんだかそう聞くとほっとしますが、前途多難感もありますね。


組織的にオープンイノベーションを進める際に必要な3要素

p118

  1. トップのリーダーシップ
  2. 現場の研究者の高いモチベーション
  3. 取り組みをサポートする専属の推進チーム

この3つが揃わない限り、活動はどこかで停滞する。そして、活動を後押しする圧倒的な原動力は、「危機感」らしい。追い込まれていなければ動けないのが人間の性なので、これはわかりやすい。危機感を如何に共有し、お尻に火をつけさせるかも実は重要な活動になるのでしょう。それが啓蒙活動の中に入れるべき要件かもしれませんね。


さいごに

 この本は、まさに今自分が悩んでいる部分への参考図書だったので、書かれていること全てを記録したいくらいでした。しかしながら、前回の課題図書レビュー「ホンダ流ワイガヤのすすめ」では、事細かに書きすぎて疲れ果てたので、今回はその反省から、ほんとにエッセンスだけ抜き出したつもりです。

これから、実務に落とし込んでいくわけですが、目先の課題は、
『オープンイノベーションに取り組まなくても、なんとか生き残れるが、10年後には仕事はなくなっているかも。』
ということをいかに伝えるかということです。つまり、先述の「危機感」を煽ることが大事かもしれませんね。さてさて、これからが大変。。。


読了期間 2016.7.14-7.17


その気になったら追記する内容

p219
オープンイノベーションは街コンと一緒?
p254
アメフトは親が子供にさせたくないスポーツ
p266
世界中の頭脳をフル活用して、自分たちだけのためにアイデアを教えてもらい、それを報酬と引き換えに獲得することで互いにメリットを享受する。