いつかギャフンと言わせたい

平凡な企業研究員が、いつか周りをギャフンと言わせるための野心的かもしれないゆるい記録

イミテーションゲームが面白すぎた。

久々にDVD借りて映画見ました。普通ならSFとか流行り物とかを見るのですが、今回は以前紹介したMust See Listから。なんだか、とにかく共感して泣きそうになったシーンもありました。

イギリスの天才数学者アランチューリングがドイツ軍の最強暗号機エニグマの解読に挑む話です。研究者として無視できないポイントがたくさんありましたので、要点をまとめてみます。

あらすじ

 1939年、英国。世界一の数学者を自負するアラン・チューリングは、ドイツ軍の暗号エニグマを解読するという政府の極秘任務に就く。チェスの英国チャンピオンなど各分野の精鋭によるチームが結成されるが、自信家で不器用なチューリングは彼らとの協力を拒み、一人で電子操作の解読マシンを作り始める。そんな中、新たにチームに加わったクロスワードパズルの天才ジョーンがチューリングの理解者となり、仲間との絆が生まれ始める。暗号解読をゲームと捉えていたチューリングだが、やがてその目的は人の命を救うことに変わっていく。いつしか一丸となったチームは予想もしなかったきっかけでエニグマを解くが、解読したことを敵に知られれば設定は変えられてしまう。MI6と手を組んで、チューリングはさらに危険な秘密の作戦に身を投じるのだが──。

公式HPより

なんだかほとんどネタバレしているような。。。とにかくすごいドイツ軍のエニグマという暗号機を解読するためのプロジェクトに参加した天才数学者の話です。

エニグマを解読するには2000万年かかる(普通の手段なら)」

この映画のポイントは勝手ながら3つだと思っています。

  1. 成果を履き違えると本当に達成すべき目標を見失う
  2. 良き理解者・仲介役の存在の重要性
  3. 誰にでもコンプレックスがあるということ

このあたりが、研究を仕事としている人や新しいことを創らないといけない人に響くポイントだと思いました。


成果を出すとはなんなのか?

 この映画で語られている大きな事象は、「成果とは一体何で評価すべきなのか?」という点だと思います。暗号解析において、チューリング以外の元々の分析班は、毎日の膨大な人海戦術のおかけで、多少は暗号の規則を把握していると主張します。それが成果だとも主張しています。



「成果を出しているのは我々だ。文字の使用頻度の分析で暗号文をかなり読み取った」

一方、チューリングは、毎日毎日何かの機械の図面を考えて作成しているわけです。それを周りの人が見たら、「なにを遊んでいるんだ?少しでも多く、今日の分の暗号解読を進めろよ。」と思われるのです。

しかし、チューリングの視点はそんな目先のことを捉えていません。

ここでいう成果とはなんなのか?

 一体、成果とはなんなのでしょうか?ここで手作業解読チームが言う成果というのは、あくまで暗号解読の一部に対して解決方法が見出せたということだと思います。しかしながら、エニグマ攻略のための最大のミッションは、「その日に発信される暗号文を解読し、攻撃を止めるか、攻撃を避けることで英国兵の死者を減らすことです。この目標に対しては、全く成果が出ていません。少しは暗号規則が解読できていたとしても、それは目標達成上のプロセスの一歩にしか過ぎないということです。


一つ上を行く視点で考える

 チューリングは、通常のやり方では歯が立たないことを知ってか知らずか(知った上でだと思います)、別の方法が必要だと考えます。


「私はどんな暗号文でも解読できるマシンを作り、毎日 瞬時に読み解くつもりだ」


 エニグマの暗号規則は毎日変わります。これが最大の問題なのです。やっとこさ今日の暗号規則を発見できても、明日には無駄な事になっている。これまでのやり方は、手作業で暗号規則を探ろうというものだったので、毎日毎日、大勢の人が暗号規則の解読作業を行っていた。しかし、毎日12時になったとき、すべての作業は無駄になることを知る。これの繰り返しだった。これでは人の手間と時間がかかりすぎる。しかも、暗号が解読できるのは、作業を行っている中で運が良ければできるレベル。
 だから、チューリングは、10×20乗通りの設定の可能性がある暗号規則を手作業で解読するのは不可能だと判断し、自動的に解読するマシンが必要だと判断した。来る日も来る日も、暗号解読の作業ではなく、暗号解読を一括して行うマシンの設計作業を行っていた。
 はたから見れば、チューリングの作業には進展がないように見える。だから、これまでのやり方をしていた人は怒り、あんなやつに何ができる?といった不信感にもつながる。もちろん上官は成果を出していないチューリングに不信感を抱く。


何もしていないように見えるやつは、本当に何もしていないのか?

 研究などにおいては、こうゆう風に見られてしまう人も多くいると思います。ま、本当に何もしていない人も場合によっては存在するかもしれませんが、多くの場合は、中長期的なビジョンを掲げ、将来の大きな成果を生み出すための、地道な作業を行っているものだと信じます。そういった人たちは、他部署で規定路線の中で成果を出している人から見ると、「あいつらは何やってるんだ?遊んでるのか?」という印象を持たれやすいのは事実でしょう。そういった印象に対し、やはりどこかで「こうゆうことなんです!こんな成果をだすためにやっていたのだ!」となんらかの形で、成果っぽい何かを見せつける必要があると思っています。



理解してくれそうな人を手堅く味方につける

 直属の上司は、目先の成果を出している"手作業解読チーム"を評価しているため、チューリングのマシン構想には全く理解を示しません。マシン製作のための10万ポンドの予算についても全く了承いただけない状況でした。そこで、チューリングは、直属上司のさらに上の人間に説明して理解してもらうことを考えます。

天才数学者で人付き合いが苦手で不器用なチューリングの、意外な政治力を発揮した場面でした。その後は、この作戦がうまくはまり、トントン拍子にチューリングマシン製作に動き出します。

とにかく理解者を味方につけるしかない

 これも研究や新しいものの開発を実らせる上で、必要なプロセスだと感じました。基本的に会社の中で、必ずしも上司に恵まれるとは限りません。逆に上司の方も部下に恵まれるとも限らない。そんな巡り合わせの世界の中で、直属上司が全くすべてを理解してくれるという確率は極めて低いと考えています。そんな中で、お互いが歩み寄り、理解を深めるプロセスを踏まない場合、やはり本当に正しいと思う信念的なものは、理解してもらえる人にぶつける方が実現可能性が高まると思います。そんなことをチューリングの事例から確認することができますね。


この人がチャーチル首相につながるハブのような人。直接、上層部につながっていなくても、誰かを経由することでも問題ないということ。そして、チャーチル首相は、情報活用の必要性、必然性を理解していたということ。このあたりがチューリングの考えを後押しした要因ですね。
www.yomiuri.co.jp



目標達成のため、優秀な人材を集める

 エニグマ解読プロジェクトにおける権限を得たチューリングは、新たな優秀な人材探しのためにユニークな手法を用いました。それは、解けたら職につけるかもしれない応募資格付きのクロスワード問題を新聞に掲載しました。

全国民に平等なチャンスを与えることで、優秀な人材が発掘されると信じていたのでしょう。


(おまけ)

最終試験に集まった人の中で、女性はただ一人。この時代の男女差別なのか、女性は秘書試験を受けに来たと思い込まれています。

エニグマ解読に至る流れ(完全ネタバレ)

この映画の醍醐味である、チューリングマシンの完成〜エニグマ解読の流れはざっくりお伝えします。完全にネタバレの内容を含むので、見ていない方はご了承ください。

チューリングマシンの製作は始まったが、周囲の疑念は深まる

チューリングは、自身が構想するマシンの製作に取り掛かったが、周囲の連中はまだその価値をわかっていない。

そして、何ヶ月も結果を出せず、マシンばかり作っているチューリングへの非難が大きくなり、周囲の怒りや焦りはピークに達する。

そのせいか、ロシアからの二重スパイという容疑が浮上し、チューリングマシン製作は一時中断する、などさまざまな阻害要因が降りかかります。 それらをなんとか振り切って、チューリングマシンを完成させますが・・・

チューリングマシンは完成するが、解読スピードに課題が残った

 チューリングはマシンが完成すれば、解読は簡単なものだと思っていただろうけど、実際には運用上の課題が残っていた。マシンは機械仕掛けなので、どうしても処理に時間がかかるのだ。それをどうするか、悶々と考えているとき、例の女性(ミス・クラーク)が助言する。


そして、アランチューリングは、メンバーにリンゴを差し入れする。(当時のリンゴの価値がどれくらいかはわからないが、差し入れされた方は悪い気はしないだろう)


そして、徐々にメンバーの協力意識が芽生え、一体感が生まれる。

この時点で、メンバーみんながチューリングマシンを使ってエニグマ攻略を目指すという目標の共有がなされました。チーム一丸となったとき、やはり物事はいい方向に進み始めます。

ヒントは、業務外のふとした雑談からやってくる

仕事を終え、いつものバーで飲んでいると、メンバーの一人(一番の色男)が、通信傍受の仕事をしている女性を口説きにかかる。すると、その女性から思わぬヒントが。

この話を聞いたメンバーは、ピンとくる。常にエニグマ解読のことを考えているということ、メンバー間で意識が共有されているからこそ、みなが同じレベルでこのヒントに気づく。

クリストファーってのは、チューリングマシンの愛称です。高校時代、チューリングが好きだった同級生の男の子の名前です。

ここで、チューリングマシンが探索するのは、すべての暗号規則ではなく、特定の部分的な規則だけでいいのではないか?ということを思いつきます。そして、実際に実行してみると。

これまで、解読作業を開始すると収束せず動き続けていたチューリングマシンが、止まる。

そして、チューリングマシンによって解読された規則通りに、直近の暗号文を解読してみると。

これで、最強暗号機エニグマは攻略されました。

しかし物語は、この後も面白くて、暗号を解読したことを的にばれないよう、如何にして戦争を続けるか、という別の観点での議論が続きます。それらは、今回のレビューでは省くことにします。


人には必ずコンプレックスがある

 チューリングマシンの愛称が、チューリングがかつて好きだった同級生のクリストファーという名前であることからわかるように、アランチューリングは同性愛者でした。なので、最高のパートナーと思われたミスクラークとは、表向きは恋人関係でも本質的にはそうゆう関係ではなかったことが明らかになっています。
 そして、この当時のイギリスでは、同性愛者は罪の対象だったということもこの物語を一筋縄にさせない要因です。一体なぜ同性愛者が罪の対象なのか?それは、LGBTとかダイバーシティとか言っている今の時代とは全く違う価値観があったことが想像できます。
www.huffingtonpost.jp

 こういったことが、研究の良し悪しや偉人になる要因だとは言い切れませんが、何かに秀でている人は、常人では考えられないような苦労や境遇、差別的扱いなどを受けている場合も多くあったのではないでしょうか。現在も、いわゆる変人とか異端児と呼ばれる人は、一般世間からは白い目で見られたりする部分もあるでしょう。そういった葛藤の中でもがき、考え抜くことで、本当に必要なイノベーション的なことが生み出されるのかもしれないとも思います。

さいごに

少し乱文的なレビューになってしまいましたが、このイミテーションゲームから読み解けることを一言で言うとすれば、
「新しいこと、人とは違う視点での問題解決の方法は、しばしば周囲から理解を得られず疑いの目で見られるが、そこで諦めず、信念を貫き、ときに自分のやり方を見直しながら、やり続ければ、きっと結果に到達できる」
ということでしょうか。

時として誰も想像できないような人物が、想像できないような偉業を成し遂げる

 そして、劇中にも多く登場するこの言葉。
「時として誰も想像できないような人物が、想像できないような偉業を成し遂げる」




親友のクリストファーが、慰めてくれるシーンです。こうゆう心の友みたいな人がいるだけで、人生頑張れたりしますよね。


これほどまでに、画面キャプチャを多用しても怒られないのか、少し心配になりながらも、このブログでの初めての映画レビューは以上とします。

鑑賞日 2016.7.2