『だから、僕らはこの働き方を選んだ』東京R不動産のフリーエージェント・スタイル を今更読んだ。


働き方に関する研究をしている人におねだりして買ってもらった本を読み終えました。車通勤だと本を読む時間が限られてくるのでなかなか読み終わらないが悩みです。

だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル

だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル

2011年末に発刊された本ですので、比較的古いのですが、東京R不動産の価値観や働き方は未だに新しいと感じるものがあります。本当にフリーエージェント的な動きができれば、楽しくやりがいを保ちながら、難局があっても乗り越えられそうだと考えさせられます。

ちなみに東京R不動産はこちらのサイト
www.realtokyoestate.co.jp


この本のポイントはざっくりと以下の2点かと思いました。

  1. これまでの日本の住宅・不動産のあり方に一石を投じていく活動
  2. そのために楽しく自分がやりたいこととして行う働き方のカタチとはなにか?

一応同じ業態の中にいる者として、共感したり、圧倒されたりする部分が多く、引用項目がいつもより多くなってしまいました。多少割愛しつつ、忘れたくない部分を重点的に記録しておきます。

会社でも、独立でもない、中間的な働き方

p23

僕らは今の日本や東京の住環境に満足しているわけではない。それを変えていく社会的なエンジンになりたいと思っている。

不動産ビジネスが軸にあるのではなく、それは手段の一つであり、僕らの軸は、いかに空間を良くするか、楽しむかというところにある。

僕らにとっての問題は、それを既存の会社の枠組み、例えばディベロッパー会社やコンサルティング会社、広告代理店、そして、建築業界の中ではストレートにやり切れないと気がついたことだ。だとしたら、それらを横断するような組織を自分たちの手で作るしかない。

従来と違った働き方をするには、このような明確な理由と目的意識があることが大事なのだと思います。なんとなく「フリーランスでやってます。ふふーん」みたいな人とたまに出会いますが、中身があるようでないような、そして自由なような、実は不自由なような印象です。やはり、現在起きている日本や世界の課題の本質を捉え、そのために最も効率良く動けるカタチはなにか?を問い続けることが大事なのかと。


東京R不動産はこうして始まった

p41

街の不動産屋では、情報のあり方に基準があるとはいえ、結局築年数や平米数、予算などでしか物件を探すことしかできない。

そうなんですよ、これ。これは私もなんとかしたい。でもR不動産さんが先にやられているので、私はそれ以外のやり方を考えないといけないと思っています。


ベースキャンプの重要性

p58

オフィスは仕事をする場というよりも帰ってきて情報交換をする場所としての意味づけが大きい。フリーアドレスは選ばず、なんとなくこいつはこの辺だな、あいつはあの辺だなといった主たる居場所があった方がやっぱりいい。テーブルはフラットだけど、イスは自己主張している。

普通の会社にいると、逆に個性は殺されます。でもちょっとだけ個性を出すだけで、良い味がでたりするものです。個性派集団の中にいるならば、なお一層の自己主張は必要でしょうね。椅子だけ主張なんて、なんか良い塩梅ですね。

キャラクターを重視する

p64

なんでもそこそこできるよりも、何かに秀でているのがいい。キャラクターが立っているからこそ、適切な場所に配置できるようになる。

p66

渋いレトロな戸建住宅をコツコツやるのが特異なヤツ、品のいい物件を品のいいお客さんたちにつなげていくのがうまい人。またあるメンバーは、CETエリアと呼ばれる東京の東側、神田や日本橋の裏路地の古いビルをギャラリーやアトリエ、エッジの立ったアーティストに紹介するのを得意とし、それ以外には興味がないし、やろうとしてもうまくいかない。

キャラは扱うモノのテイストだけでなく、仕事の捉え方や働き方にも表れる。

やっぱ、個性は大事ですよね。一般企業でも一つの職種を一生やり続けることは珍しいでしょうから、早い段階で自分が打ち込める仕事に出会えればハッピーかと思います。でも、普通に過ごしているとその機会には出会えないんですよねー。なにかドラスティックな出会いが必要?

感覚はゆるく、仕事はきちんと

p74

僕らのチームに必要なのは、「マジメな変人」なのだ。そのバランスを取るのに重要なのは、ルールや罰則でもない。

研究職でも実はこれが求められているはずです。でもなかなかそうはなりませんね。根が真面目な人が集まるから、そこから変人になることは難しいのでしょうね。私は幸い、根はそこそこマジメ程度(ほんとかな?)の人間だと思うので、会社に入ってから諸先輩方からマジメさを教えてもらった。感謝です。逆に3年前に変な大学院に出向したことによって、変人的要素が付加されたとも思ってます。自分なりにはそのちょうどいい頃合いを目指したいのですが、まだ模索しているところー。というより、ほんとの変人って自分を変だとは思っていないもんなぁ。。。

あと、「感覚はゆるく、仕事はきちんと」という表現は、かつての恩師からも同じような言葉を聞きました。研究に関しても「素人感覚を大事にして、プロの仕事をせよ」と。感覚はやはりエンドユーザー目線でないとだめということですね。

ナナメ出世とジグザグ出世

p76

垂直出世とは従来型の出世で、課長になり部長になり重役になり、そして社長を目指すこと。
(中略)
水平出世とは、会社を辞めて、いろいろな分野に手を広げ、その表面積で生きていくタイプである。
(中略)
組織に所属して組織内のステータスが上がる出世の道も確実にこなしながら、同時にプライベートで本を書いてみたり、ある種の特技を持つことで社会的出世をするという水平展開の軸も持つ。両方のベクトルを掛け合わせたのがナナメ出世。

東京R不動産で可能なのは、「ジグザク出世」なのではないかと思っている。例えば、今年は水平、来年は垂直と決めてみるということだ。
売り上げがトップクラスで年収も高いメンバーの一人は、今年は水平展開をする都市と決めている。「このまま垂直型だと、気持ちではなく体が挫折思想」と、昨年の途中から水平移動を始めた。

以前、同じような働き方を論じている本をレビューしています。
demacassette2.hateblo.jp

これって、今の流行なのでしょうかね。東京に限ったことではないと思いますが、おそらく今の若い人や感性の高い人は、会社という一つの軸で仕事をし続けていても、何かが足りない、いずれ足りなくなるのでは?と感じ取っているのかもしれません。そういった思いの中でも、やはり生活はしていかないといけないので、垂直出世は無視できない。でも自分のサブタイトル的なB面的なものも持っておきたい。というわけで、ナナメ出世という表現がしっくりきました。

働き方3.0

p82

働き方1.0が、終身雇用に守られた会社と個人の幸福な労働形態だとすれば、働き方2.0は、終身雇用が崩壊し、個人が会社に隷属することなく、副業を行ったり個のスキルアップを通してスーパーサラリーマンとなり、より条件のいい会社に転職することでキャリアアップするような働き方だ。(中略)
働き方3.0とは、会社と独立の中間にあるオルタナティブな働き方だ。会社に雇われるという既定概念から自由になり、プロジェクト単位で個人が集まってチームをつくり、成果を生み出すという働き方。

現代の日本で、働き方1.0の中にいる人は依然として大多数だと思います。が、その中で「このままではマズイ」と感じた人が2.0や3.0の働き方を実践し始めているように思います。そういった人は似た者同士でつながりあっているので、比較的出会いやすい。だからさらに仕事が広がる、といった現状があると思います。ただし働き方1.0全盛期で働いていた、概ね現在50歳以上の方々は、その発想が概念がまったくわからない。だから、若い世代や感性の高い人と話が合わない。徹底的に話が合わないのですね。。。だから、私は無理に合わせないようにしています。疲れるから。。。

フリーエージェントの報酬システム

p96

家賃や売買価格によって個人に支払われるパーセンテージは異なっていて、小さいものはパーセンテージが高い。特に一人暮らしのための家賃10万円未満の物件は、サイト楽しく身近であるためにも多くしたいから、報酬の率は高い。

p98

「固定給にしようか」と提案は何度もしているけれど、嫌だと言う。「休みたい時に堂々と気持ち良く休める方が大事だ」「固定給なんかになったら俺はダメ人間になります」というわけだ。

なんかわかる気がしますね。というか、こんなこと言うタイプの人がやっているから面白い物件を探してくれそうだし、サイトも面白くしてくれそうだと思っちゃいます。


p106

リスペクトの軸をたくさん持つ組織を目指している。あいつはあれがすごいと各人が勝負どころを持つ組織。

これも強い組織、レジリエンスの高い状態だと思います。事業が画一的だと、結局は豪無処理が早いだとか仕事が丁寧だとか、人当たりがいいだとか、同じ評価指標上での戦いになってしまいます。そうなると、醜い争いや最悪の場合、落とし合いが始まってします。そんな状況にならないようにするには、やはり個人の棲み分け、差別化は避けて通れませんよね。

求心力をつくるのは「ビジョン」

p112

 個人の個性が重視され、、縛りもゆるい会社には遠心力も働くはずだ。(中略)求心力をどうつくるのかがすごく大事になってくる。そうしたアランすに常に気を使っておかなければならない。
 でも一方で、従順な社員がたくさんいる会社には、求心力はあるのだろうか?安心と依存は、ずいぶん違う。安心して働けるということは素晴らしいことだけれど、会社に依存する人たちの集団にあるのは求心力ではないはずだ。
(中略)
結局大事なのはビジョンだと思う。

そうなんですよねー。私は、個人的にNPO活動をやっているのですが、これはビジョンが同じ人が集まってできた集団なので話が早くて面白いですでも、会社ではそうではない。就職活動という一般的なプロセスによって、凝り固まった業界分析を行い、ある程度の企業知識を得て面接に向かう。そんなプロセスの中にビジョンの共有などあり得ないですよね。と、今となっては思いますが、就活中はみんな生活かかっているので必死です。会社に入ってから、社会に出てから気づくしかないのかもしれません。むしろ気づけたら人生の岐路に立てる。気づけなければ生活のための仕事になってしまうかも。


p123

僕らは、「もっとがんばれ!」と尻を叩くのもあまり好きじゃないし、怖い顔してプレッシャーをかけるのも好みではない。だが、そもそも仕組みがプレッシャーをかけるようになっているから、問題を起こさない限りは怒る必要がないのだ。

いいなぁ。ってまぁ、私の職場も怒られることは少ないですけどね。幸い。でも、これは余計に怖いという状況でもありますね。


p140

人間は合理的でないものに心惹かれると同時に、便利なものについつい惹かれていく。そして、その成れの果てが幸せを実感していない日本の多くの人たちだったりする。

以前、古市さんの著書「絶望の国の幸福な若者たち」でも同じこと言ってましたね。

絶望の国の幸福な若者たち

絶望の国の幸福な若者たち

規模ではなく影響力で成長する

p145

僕らが今までやってきたことは、僕らは本質的な豊かさにつながると思ってやっているけれど、今のやり方ではいきなり100億のビジネスになっていくものではなくて、少しずつ自然に広がっていくものだ。確かに物件を探してサイトを訪れてくれるお客さんは毎月20万人いても、実際に成約するのは50件くらい。旧に大きくしようとして、フツウの物件をどんどん紹介し始めたら、僕らの大好きなお客さんは離れていってしまう。

深いですね。やはり既存市場との差別化を徹底しているからこそ、こういったスタンスになるのでしょう。一般企業ではここまで振り切れないですよね。少なくとも、過去に自身のビジネスモデルで大成功を収めている会社は特に。過去の栄光ほど邪魔なものはないですね。




p154

自然体なスタンスは儲からなそうに見えるようだ。

これは妬みであり、羨ましいという気持ちの表れでもあると思いますよ。

p156

基本的な価値が出揃った今は、企業は小手先の差別化にとどまらない「何をつくるのか?」「新たな価値そのものを考え出す」という課題、つまりHowからWhatという問いかけに立ち戻っている。

これは、会社の中の企画系、研究系のごく一部の人間が気付き始めていることです。私は気づいていますが、浸透させるのに時間がかかっています。もっと頑張らなければ。
demacassette2.hateblo.jp


p178

例えば、メンバーの一人がそうだった。建築家になりたい、いい建築や街をつくりたいと思って建築デザインの勉強を始め、でも自分の力に自身が持ちきれなかった。そこで、考え方を変えることにした。建築家を諦めても、いい建築や街をつくっていくことは諦めない。諦めないために諦めることにしたのだ。(中略)結果的に何も諦めていなかった。

いいっすねー。この境地に辿り着ければ、一生仕事に打ち込める気がします。私もある種この状態に入っています。会社では自分の思うまちづくりが直接はできない。けど、会社をうまく使えばいろんなことができるはずだ。ならば、そのアプローチを考えよう。別に正面突破だけが手段ではない。といった感じ。


p182

そもそも建築が大好きな人で商売人は滅多にいない。

これは実感します。が、時にこれが仇となることも。それは追い追い言及したいですが、簡単に言うと、建築系の人は、いいもの作れば必ず売れると思っている人も多い。ごく一部ですが、これはかなり現実と乖離していますよね。もっと泥臭く、人間臭い要素が現実には潜んでいるので、そういった部分を考慮できる建築系の人に会うとすごい話が盛り上がります。


p186

「いいとも!」と「タモリ倶楽部」は、真面目にいいかえれば、大きな正しいニーズに応えて利益を出す事業と、小さく正しい活動&発信の事業だ。

とてもわかりやすい例えです。会社の中でもこっそり検討を進める人がいて、急に成果として引き出しから出すことがあります。これはほそぼそとタモリ倶楽部的な仕事を進めていたのですね。ある意味、現代社会で生き抜く処世術にも通じます。

僕らにとって大事なこと

p194

(5つのキーワード)
「ビジョン」は仕事でのテーマであり、僕らにとっては「こだわりの空間を増やしていくこと。これがまず大事だ。
「自由」は、やりたいと思ったことをやれる自由がある状態。
「旅」ができる人生であること。
「寿司」はお金のバロメータであり、自家用ジェット機はいらないけど、うまい寿司を遠慮なく食べられるだけの経済力はきっちり確保する、といった具合。
「家族」は、親や子供といったいわゆる家族はもちろん、価値観を共有できる仕事仲間もそれに含まれる。

わかりやすいキーワードですね。特に「旅」と「寿司」はわかりやすい。これからの働き方を考える上で大いに参考になります。


感想

 とにかく引っかかる言葉が多かった!というのが率直な感想で。やはり同業種で成果を上げていると思われる人たちなので、言及されている内容のほとんどが気になる事柄でした。今後も活動をつぶさに観察していきますし、場合によっては物件を紹介してもらうかも!?