新国立競技場整備事業から施設建設計画を学ぶ1(再コンペ案をよく見てみる)
急遽始まった新国立競技場から施設計画を学ぶシリーズですが、新しく公表された2つの技術提案をフラットな視点で比較してみます。と、その前にネット上の反応www
A案 | B案 | |
---|---|---|
言われ方 | お寺 とろろ昆布のおにぎり |
神殿、縄文遺跡 マグロの切り身 |
建築家予想 | 隈研吾氏 | 伊東豊雄氏 |
(参考)森会長のお言葉 | この中でスポーツ大会をやっているという明るさがない感じかな | いかにもスポーツという雰囲気が出ている。ギリシャの神殿みたいな感じですね。 |
togetter.com
news.livedoor.com
・・・森さん、毎回話題性がありすぎます。前のザハ案は「生ガキみたい」と言ってましたしね。
おっと、ここから真面目な比較です。公開されている技術提案書から簡単な比較表を作ってみました。
概要 | A案 | B案 |
---|---|---|
構造 | 直接基礎 鉄骨造(一部SRC造)の制振構造 屋根:鉄骨造、木材と鉄骨の ハイブリッド構造 |
木造柱+RC造、中間層免震 屋根:鉄骨造 |
階数 | 地上5階建 地下2階 |
地上3階建 地下2階 |
建築面積 | 6.6万㎡ | |
延床面積 | 19.2万㎡ | 18.6万㎡ |
建物高さ | 49.2m | 54.3m |
建ぺい率 | 64.05% | 58.57% |
容積率 | 170.07% | 153.45% |
実質席数 | 約6万席 車いす席4.5万席 将来8万席 |
6.8万席 |
こう見ると、規模的にはほとんど同じなんですね。
あ、敷地と建築要件決まってるから当たり前なのかな?しかし、建物高さに若干差異があります。A案は50m以下! この50mに何か意味はあるのでしょうか。。。
周辺への圧迫感の配慮
A案の技術提案の中にありました。高さの意味が。
出所 : JSC HP, A案技術提案書・参考添付資料, p23
なるほど、実際に建物が建ったときの圧迫感を抑える配慮なのですね。「ここにスタジアムありますよ!!」ではなくて、「周りと調和したスタジアムなんでここにいさせてくださいね」といった姿勢でしょうか。
このように、今回の提案では、周りとの調和(特に外苑)や日本らしさの表現に特徴があります。そのほか、両者の技術提案書から特に違いがありそうなところだけ、抽出しておきます。
A案
来訪者は日本らしさを感じられる
JSC HP, A案技術提案書・参考添付資料, p22
なんか実際に中に入った感覚になりますね。かなり細かいところまで工夫や配慮してる印象。
周辺の自然と調和し、市民に開かれたスタジアム
JSC HP, A案技術提案書・参考添付資料, p23
前述の高さを抑えることにも言及。周辺と調和してあまり主張しない方針ですね。
B案
来訪者は四季のうつろいを体感し、外苑の社とスタジアム内を結ぶ
JSC HP, B案技術提案書・参考添付資料, p29
夜のイメージは、ここに神殿がありますよ!といった主張強めの印象。
神宮の歴史に立脚し日本の新しい伝統を創る
JSC HP, B案技術提案書・参考添付資料, p27
風の流れ、熱の流れをイメージしてマクロな分析をしてます。こうゆうの個人的には好き。
このくらいでしょうか。あとの提案は、構造面や施工面の工夫だったり、ユニバーサルデザインや更新性への配慮だったりで、あんまり違いがわからないように見えます。実際は、その部分についての詳細を見る気になれず、あんまり深く読みきれていません。
世間はA案推し
世間的なA案推しの理由として
- 縄文遺跡よりお寺の方が外国からのウケも良さそう」(30代女性)
- 「総工費が7億円安い」(30代男性)
- 「甲子園のように植物と建物が同化するようなイメージが良い」(50代男性)
- 緑が多く使われていて周辺環境に調和している。皆に愛される憩いの場になりそう。
わかるようなわからんような。やはり見た目のみの判断ですよね。
一方、公表をされている技術提案をちゃんと見る感じではいずれも甲乙つけ難しですよね。見た目の印象で評価が分かれている感じでしょうか。B案は赤色を強調しなかったらそんなに酷評されなかったのでは?とも思ったりしますね。
とりあえず、こんなところで。次は評価方法とかかな?